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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の九十一「勝負は天秤、どうにでも転ぶ――日本は2年前に得た教訓を忘れるな」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年10月05日

2年前の夏、日本の選手は前半と後半で全く違う景色を目にした。

敵地で大金星を逃したCLマドリー戦のスポルティング。選手交代がなければ勝っていた、とは断言できないが、選手交代が勝利の主な要因であることは事実である。 (C) Getty Images

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 もっとも、コロンビアには、あらかじめ戦略があった。ディフェンスラインを下げ、ブロックを作り、攻撃はカウンターに限定したのだ。
 
「日本は頭から積極的に攻めてくるので、前半は辛抱することになっていた。相手が疲れた後半に試合を決める。そういうプランだった」
 
 コロンビアの左SB、パブロ・アルメロは後にこう語ったが、その通り、後半にファン・フェルナンド・キンテーロに代わってエースのハメス・ロドリゲスが入ると、様相は激変した。
 
 キンテーロは1本のパスで勝負を決めようと急ぎ過ぎ、いたずらにボールを日本に渡していたが、ハメスは落ち着いて起点となり、主導権を握った。そして波状攻撃によって2-1と均衡を破る。背番号10の投入によって、試合の局面は明らかに変化した。
 
 一方、日本も諦めない戦いを見せる。本田から出たパスを内田が持ち込み、岡崎に当て、リターンを内田が流し込み、ニアで大久保が合わせる高度な攻撃を展開。しかし、ゴールが生まれない。香川が空回りし、得点機をモノにできなかった。
 
 すると、焦りが増幅したのか、カウンターを立て続けに浴び、ここでディフェンスが脆弱さをさらけ出す。吉田麻也がハメスのフェイントに倒れ込むシーンは、象徴的だった。
 
 結局、1-4のノックアウト負けである。
 
 スコアほど内容に差がある試合ではなかったと言える。しかし、選手交代を機にコロンビアの戦略が動き出すと、日本は何もできなかった。前半と後半では、選手たちは全く違う景色を目にしたはずだ。
 
 勝負は天秤、どうにでも転ぶ。
 
 間もなく迎えるロシアW杯最終予選のイラク、オーストラリア戦で、日本は流れを掴めるのか。戦力的には優位だ。
 
 しかし、天秤が動いた時、それは抗えるものではない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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