【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十八「“戦術に順応する”ということの真の意味を理解できているか!?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年09月14日

戦術に優劣はなく、そこで己の長所をどれだけ出せるかが重要。

バルサで数々の栄光を手にしたとしても、バルサ以外のチームでは何もできないというのでは……。写真はユースチーム。 (C) Getty Images

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  一方で、「バルサイズム」は独特であり、そのオートマチズムは他では通用しないこともある。その証拠に、バルサの下部組織「マシア」で薫陶を受けたプレーヤーたちは、別のチームに新天地を求めると、たいていは苦労している。
 
「頭の上をボールが行き交うなんて、これは本当にフットボールなのか?」
 
 バルサの戦術を身につけた選手たちは戸惑い、本来のプレーをなかなか見せられない。
 
 ただ、ここで求められるのも、異なる戦術に順応する力と言える。
 
 ボールを繋ぐスキルが乏しい選手たちは、プレッシャーを前にして危険を回避し、長いボールを送り込む。バルサイズムに漬かった選手には奇異に映るかもしれないが、それも戦術のひとつである。
 
 長いボールが効率的であることも少なくなく、得点を生むための最善の手段の時もある。短く確実に繋いでボールを運ぶか、長いボールを縦に速く蹴り込んでゴールを狙うか――そこに優劣はない。
 
 トッププロの世界で生き残り、輝いている選手は、チームの求めに応じ、自分の長所を出すことができている。我は強くても、余計なものは捨てられる(その点で、武者修行の末にバルサに戻ってきたデニス・スアレスは楽しみだ)。
 
 Jリーグのクラブは育成面で充実し、ひとつのプレースタイルを浸透させ、身につけさせることができつつある。ボールテクニックを向上させることには成功した。
 
 しかし、型を作ってしまい、脆い選手が多くなったのも事実である。順応力を育むことができるようになれば、今以上の好人材を生み出すことができる。
 
 潰れるか、潰れないか。
 
 そのぎりぎりの競争で、プロでのし上がれる選手か否かが選別される。そうして這い上がった者が、戦術のなかを“泳ぎ切れる”、優れたチームプレーヤーとなるのだ。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。

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