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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十三「いま改めて問う――監督の仕事とは? 名将とは?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年08月11日

まず「選手の力を見抜けるか」、そして「適材適所で使う」――

2年前のブラジル・ワールドカップではギリシャを率いて波乱を起こし、今夏は母国ポルトガルを初の欧州王者に導いたサントス監督。同胞の「スペシャルワン」とは、また違ったタイプの名将である。 (C) Alberto LINGRIA

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 サントス監督は、クリスチアーノ・ロナウドのエゴを使いこなし、悪たれ小僧の気配が抜けないリカルド・カレスマを切り札とした。また、未知の18歳、レナト・サンチェスを抜擢する一方で、リカルド・カルバリョやブルーノ・アウベスのようなベテランを要所で的確に使った。
 
 選手の本質を心得ていたのだろう。そして大会のなかで、選手たちの才能を進化させることもできた。
 
 フランスとの決勝戦で優勝を決める得点を挙げたFWのエデルも、他の監督だったら見向きもされなかっただろう。プレミアリーグで不遇を託って、フランスのリールに移籍し、ようやく息を吹き返した程度だった。しかし、サントス監督はその力を見抜き、信じた。
 
「昔、ヨハン・クライフがバルセロナの監督だった頃、レアル・ソシエダにいたチキ・ベギリスタインを獲得したが、私は『なぜ、こんな凡庸なMFを?』と思ったものだ」
 
 伝説の名将、セサル・ルイス・メノッティはかつて、こう語った。
 
「ベギリスタインは確かにスピードのある選手だったが、それ以外はあまり目立たなかった。しかし、クライフは彼にダイレクトプレーを植え付け、ミカエル・ラウドルップと組ませて躍動させた」
 
 そして、こう続ける。
 
「ベギリスタインは、クライフのおかげで選手として進化した。これこそ、監督に求められる仕事だ。ひとりの選手の才能を伸ばすことで、チームの成長にも繋げる。これが真の名将だ」
 
 どんなかたちにせよ、優れた指揮官は、選手のプレーを最大限に引き出すということか。監督はまず、選手の力を見抜けるかだ。そして、適材適所で使う。
 
「選手が思うように動かない」とメンバーを入れ替えるような監督が、リーダーとして集団を率いられる道理はないのだ。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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