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C・ロナウド、ブロゾヴィッチ、フィルミーノ、マフレズらとの対戦を経て得たモノ。川崎の脇坂泰斗が感じたACLEを日本クラブが勝ち上がるためのヒント

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年08月03日

表彰台の下から見た景色

決勝後には目には光るものが。この経験は次に必ず活きるはずだ。(C)J.LEAGUE

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 準決勝の相手は前述したクリスティアーノ・ロナウドらを擁するサウジアラビアのアル・ナスル。今度は相手の配球役であったクロアチア代表としても活躍したマルセロ・ブロゾヴィッチのケアがテーマだった。ただ、中2日での戦いのなか、準々決勝でトップ下として延長戦も戦った脇坂は、体力的に厳しかった。そこで長谷部監督が選択したのは4-2-3-1においての19歳の神田奏真のCF、20歳の大関友翔のトップ下での起用だった。

「アル・ナスル戦の翌日、翌々日の身体の感じで、間違いなく準決勝は90分はもたないだろうなと思っており、監督にも呼ばれて、『準決勝は後半の頭から』と伝えられました。だからその準備をしていましたが、大関と奏真の先発抜擢は本当に驚きでしたね。

 前日練習も時間はなかったのですが、前の4人とボランチが呼ばれて“プロゾビッチ封じ”の練習を繰り返しました。彼がここに移動したらここに立つみたいな、確認でした。実際に本番では大関と奏真が徹底して対策を実践し、大関はゴールまで奪って帰ってきた。ハーフタイムでふたりは、『もう無理だ。45分って聞いていたからできました』と話していましたが、120点の出来でしたね。

 逆に後半頭から彼らに代わった僕とエリソンはプレッシャーでしたけど。しかも後半途中にブロゾヴィッチが交代したんです。そこで逆に混乱した部分はありました。僕はサウジアラビア代表のボランチの選手のほうが危険と感じていましたが、エリソンは違う選手を警戒していて、ちょっとチグハグになってしまいました。プラン外のことが起こった時にバタついたのは反省ですが、しっかり守り切る形にシフトしつつ(3-2で)勝ち切れて良かったです」

サポーターとともにこの景色を決して忘れないだろう。(C)J.LEAGUE

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 そして臨んだ決勝の舞台。再び中2日の試合であったが、あとはやるだけであった。しかしホームの大声援を受けたアル・アハリは、フランク・ケシエ、リヤド・マフレズ、ロベルト・フィルミーノらを擁するとともに、組織力も兼ね備えたレベルの高い相手だった。結果は0-2の敗戦。川崎の冒険はここで幕を閉じた。

「アル・アハリはめちゃくちゃ良いチームでした。でもちゃんとサッカーをしてくれる分、やれる部分はあったとも感じています。チャンスも作れましたし、チームとしてめちゃくちゃ差を感じたというよりは...。一方でマフレズ、フィルミーノらの状況に合わせた個の力ではやっぱり差は感じました」

 かつてシルバーコレクターと揶揄されてきた川崎としても、久々の準優勝。脇坂にとってはプロになって表彰台の下で相手が喜ぶ姿を見るのは初の経験だった。

「うーん...、悔しかった...。その言葉しか出てこないですね。決勝まで行けたチームとしての積み上げには自信を持っていましたし、サポーターの方々の頼もしさも再確認しました。でも優勝していないので、そこは...。見たことのない景色を結果的に掴めなかったわけですから、僕が言えることは今はないですかね...。

 でも本当に濃密な大会でした。選手がストレスを感じないようにしてくれた周りの方々のサポートにも本当に感謝しています。だからこそ、優勝したかった想いはありますが、再びチャレンジするためにはまたリーグ戦で頑張らなくちゃいけません」

 そして大事なことを最後に訊いた。中東のクラブが有利になる流れがある今のACLEで日本クラブが勝ち上がるために必要なこととはなんなのか。実際に新フォーマットとなった大会を最後まで戦い抜いた立場としてどう感じるのか。

「全部じゃないですかね。チームワークを高めていく必要がありますし、だからといって、個で負けて良いかっていうと、やっぱ個の局面で上回れたシーン、それがゴールにつながった場面は多いので、両方を高めることが大事だと思います。ただ組織的な戦い方に関しては、恐らく、僕ら日本クラブのほうに分があるはずです。そこをより強固なものにし、選手個人でもレベルアップする。そこで差が縮まれば、自分たちの組織力が、より優位性を生んでくれると思います」

 そのうえで改めて川崎が再びアジア王者を目指す際、今度はよりボールを握る戦い方をしたいのか。

「うーん、どう勝つかって相手にもよると思うんです。だから、相手のほうが、圧倒的に上手いのに闇雲につなぐことばかりを考えるべきではないと感じます。それを加味したうえで、自分たちの良さをどう出していくか。川崎はボール持った時の連係などがやはり特長なので、そこを多く作れるような構造にすることが大事だとは思います」

 大会を終え、リーグに戻った川崎の選手たちはより高い基準を掲げるようになった。ただ一方で、CB高井幸大、FW山田新というふたりのキーマンが海外挑戦を選択。改めて今後、苦しい戦いが待っているだろう。

 それでも脇坂は語っていた。

「(多くの選手が海外移籍し)彼らの活躍は喜ばしいですが、彼らが抜けてから良い結果を残せていないので、残っている身としてすごく責任を感じる。ACLでタイトルを獲れず、天皇杯も負けてしまった。残された者がクラブのために何ができるかが大事。まだまだ上についていくためにもやっていきたい」

 アカデミー育ちで所属8年目。伝統を受け継ぎ、背中で指標を示す。ACLEの経験をチームに還元するためにも、脇坂の働きはより重要になりそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【第1回】川崎・脇坂泰斗が明かすACLE準優勝への道のり。長谷部新体制での変化、初戦に見舞われたまさかのトラブル

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