改善の余地があるのは、我々がよく知っている選手たちも同様だ。

　ヴィニシウス・ジュニオールの頭の中には、クラックと反逆者が共存している。フットボールでいうところのクラックとは、ボールを脅威に変える選手だ。反逆者とは、権威に反抗する者を指す。両方の面で彼はナンバーワンだ。だから今以上のパフォーマンスを求めるつもりはない。

　しかし同時に、これ以上感情を露わにすることは避けなければならない。ヴィニシウスは持ち前の知性、謙虚さ、勤勉さを発揮し、有望な若手から不動のエースへと成長を遂げた。これらの美徳は、彼から試合への集中力を奪うイライラを募らせる性格を直すのに役立つはずだ。

　なぜヴィニシウスはこんなに攻撃されるのか？それは相手が彼を恐れているからだ。ヴィニシウスの最高の処方箋は、クラックの武器であるプレーとゴールで応酬することだ。もし彼が“亡霊”を振り払うことができれば、マドリーの攻撃の威力は倍増するだろう。

　ジュード・ベリンガムにも改善の余地はある。彼はグループリーグ初戦のアル・ヒラル戦で輝きを放ったが、続くパチューカ戦で我々を困惑させた。自身の怪我、キリアン・エムバペの加入に伴う主力間の役割の再定義、新加入選手特有の興奮状態の喪失…。
 

　昨シーズンはすべてが重くのしかかった。しかし、偉大な選手はそこにいる。ベリンガムが復活を遂げれば、ピッチの最も戦略的なゾーンでエネルギーとクオリティの両方の面で大きな飛躍をもたらすはずだ。

　最も心配する必要がないのはエムバペだ。彼は全てを持って生まれた選ばれし者だ。マドリーが低調なシーズンを送る中でも、ゴールデンブーツに輝き、「俺には無関係だった」と声高に叫んだ。これは卓越性の証に他ならない。

　連携を調整し、パススピードを上げ、ボールを持っていない時にコンパクトに守り、学校の授業で詩を暗唱するように毎練習ごとにコンセプトの共有度を高め、競争心の炎をチーム全体に浸透させる。シャビはこれらの課題に対する解決策を見つけるために片目を開いたまま、毎晩眠っていることだろう。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳●下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ／1955年10月４日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79～84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を２度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、２度のW杯（82年と86年）に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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