富山に来て半年になるが、富山は素晴らしい都市だ。
 
　友人と訪れたお店の女将さんが言っていた。富山市長は名物市長だと（福岡から来た友人も言っていた）。森雅志市長は素晴らしい市長であると。
 
　何が素晴らしいのかと言えば、「決断が早い！」のだそうだ。やると決めたら、すぐ決断してすぐ実行に移す（JR時代の赤字路線をなんとか継続させ、『富山ライトレール』として黒字にさせたとか…）。
 
「決断は慎重（じっくり考えて）に、実行は素早く（即座に）」と言うが、富山には決断も実行も早いリーダーがいる。
 
　そして県知事の石井知人も素晴らしい人だと女将は言っていた。僕もシーズン前のパーティーでご一緒させてもらったが、深い縁を感じた。Jリーグ発足、元年時期に静岡県庁勤務であったと言うのだ。そんな縁が富山でもつながり、僕としては光栄でならない。
 
　そして、そのことを知事の方から声を掛けて、話してくれたのである。
 
　僕が何を言いたいか！
 
　サッカーを知らない、サッカーだけを気にかけることがない人たちには数字、サッカーで言えば勝利、結果で示さなければならない。縁があるから、知り合いだから、富山県のチームだから、ではダメなのである。
 
　現役選手を引退し、チーム統括本部長（強化部長、強化のGM）をやった時、当時のボスであった三木谷浩史氏（楽天会長兼社長、当時ヴィッセル神戸社長）が僕に言った。
 
　スタジアムにサッカーを知っている人を増やすのではない。サッカーのコアな人は少ない。それよりもサッカーを知らない、見たことのないファンをスタジアムに増やすことが大事なのだと。
 
　あれからJリーグもクラブライセンス制度を導入し、集客数も大事なプロクラブへのノルマとして存在する。
 
　この富山で、カターレの近くにまだいない富山を愛し富山を氣にする人たちのためにも、我々がどんなサッカーを志向し、目指し、勝利を追求しているかをしっかり表現し、そして誰もが分かる結果を示さなければいけない。
 
　しかし、それは世界どこでも、サッカー界だけではなく難しいことである。そしてそれは、お金を掛けなければ達成できるものではなく、またお金を掛ければ達成できるというものでもない。
 
　だから必死に決断し、実行を繰り返すしかないのだ。
 
　僕自身、日本でもじっくり、そういうことを考えながらサッカーに触れられていることは幸せなことだ。
 
　スティーブ・ジョブズがこんなことを言っていた――。
「富と名声など、なんの意味も持たない。そう、生きている間に全力で取り組むことだ！」
 
　心を持って打ち込むこと。肩の力を抜いて全力で。そこには人に言えるような答えなどない。
 
2016年７月21日
三浦泰年