「今や日本にはクラブごと世界に出ていける力があると思っています」
――利重さんの思いはMVVマーストリヒトや共同パートナーに伝えているわけですか?
利重「彼らが求めているのは『MVVマーストリヒトを再興させること』であり、120年以上の歴史のあるクラブなのに、今世紀に入ってからまだ1度もエールディビジに戻ってないことに忸怩たる思いを持っています。日本サッカー界のことなんて正直どうでも良い。
MVVマーストリヒトと私たちの双方のビジョンを矛盾することなく合致させ、目標に向かって進めていくことが、マネジメントとして求められます。まさにそれこそが今後の腕の見せ所ですね」
飯塚「私からも少し補足させてください。出島フットボールは単独オーナーではありませんから、我々の思惑だけでクラブ運営ができません。DMM.comが筆頭株主のシント・トロイデンとはそういった構造上の違いがあります」
利重「ただし、『過半数を確保せず、出資比率50%だと経営上不安ではないですか?』とよく尋ねられるのですが、自分としては戦略的に50%に出資比率を抑えています。言わずもがな、フットボールクラブは地元との向き合いが不可欠であり、当面の間は地元に立脚した共同パートナーはクラブのローカル面に注力し、我々はフットボールやインターナショナル領域にと役割分担を明確にしながら、参画前は存続することすら危ぶまれたクラブの再建に向けてともに一歩踏み出したわけです」
――MVVマーストリヒトの“M”はソーシャルという意味を持つオランダ語が由来です。つまり市民クラブ。彼らはさらに日本人パートナーを得たことで国際化するわけですね。
利重「マーストリヒトという街自体(ドイツ、ベルギーと隣合わせで)地理的にも外に開けていて、インターナショナル・スクールや留学生がとても多い街なので、クラブの国際化も自然な流れなのかなと」
飯塚「地元資本だけの力でサッカークラブの成長を実現するのは難しい時代ということを、彼らも自覚しています。そこで外部の血を入れようと、最初はアメリカ系ファンドを受け入れたけれどもそれはうまく行かなかった。それでも再度心を開いて、次に来た日本の投資家と一緒にやっていく決断をしました。そのなかで国際化というのは彼らにとっては上乗せであり、クラブを成長させる一つの手段と彼らは考えていると思います」
――利重さんご自身が日本興業銀行、楽天、CFGなどで培ってきたキャリアはMVVマーストリヒトの人たちにとってもインパクトがあったのでは?
利重「提案時からある程度の信用を得られていたという意味で、やはりありがたかったですね。また、日本でプレスリリース(5月27日)した時にも手応えを感じました。『CFGの次は何をするんですか?』と訊かれるなかで、自ら資金を投じ、賛同していただける投資家の方々にもジョインしていただき、実際にMVVマーストリヒトの共同オーナーになったことで、その本気度を理解してもらえたと感じています」
利重「彼らが求めているのは『MVVマーストリヒトを再興させること』であり、120年以上の歴史のあるクラブなのに、今世紀に入ってからまだ1度もエールディビジに戻ってないことに忸怩たる思いを持っています。日本サッカー界のことなんて正直どうでも良い。
MVVマーストリヒトと私たちの双方のビジョンを矛盾することなく合致させ、目標に向かって進めていくことが、マネジメントとして求められます。まさにそれこそが今後の腕の見せ所ですね」
飯塚「私からも少し補足させてください。出島フットボールは単独オーナーではありませんから、我々の思惑だけでクラブ運営ができません。DMM.comが筆頭株主のシント・トロイデンとはそういった構造上の違いがあります」
利重「ただし、『過半数を確保せず、出資比率50%だと経営上不安ではないですか?』とよく尋ねられるのですが、自分としては戦略的に50%に出資比率を抑えています。言わずもがな、フットボールクラブは地元との向き合いが不可欠であり、当面の間は地元に立脚した共同パートナーはクラブのローカル面に注力し、我々はフットボールやインターナショナル領域にと役割分担を明確にしながら、参画前は存続することすら危ぶまれたクラブの再建に向けてともに一歩踏み出したわけです」
――MVVマーストリヒトの“M”はソーシャルという意味を持つオランダ語が由来です。つまり市民クラブ。彼らはさらに日本人パートナーを得たことで国際化するわけですね。
利重「マーストリヒトという街自体(ドイツ、ベルギーと隣合わせで)地理的にも外に開けていて、インターナショナル・スクールや留学生がとても多い街なので、クラブの国際化も自然な流れなのかなと」
飯塚「地元資本だけの力でサッカークラブの成長を実現するのは難しい時代ということを、彼らも自覚しています。そこで外部の血を入れようと、最初はアメリカ系ファンドを受け入れたけれどもそれはうまく行かなかった。それでも再度心を開いて、次に来た日本の投資家と一緒にやっていく決断をしました。そのなかで国際化というのは彼らにとっては上乗せであり、クラブを成長させる一つの手段と彼らは考えていると思います」
――利重さんご自身が日本興業銀行、楽天、CFGなどで培ってきたキャリアはMVVマーストリヒトの人たちにとってもインパクトがあったのでは?
利重「提案時からある程度の信用を得られていたという意味で、やはりありがたかったですね。また、日本でプレスリリース(5月27日)した時にも手応えを感じました。『CFGの次は何をするんですか?』と訊かれるなかで、自ら資金を投じ、賛同していただける投資家の方々にもジョインしていただき、実際にMVVマーストリヒトの共同オーナーになったことで、その本気度を理解してもらえたと感じています」
――ジェラルド・スミスさんの話をもう少し。
利重「ジェラルドのネットワークを辿るとかならずどの分野でもライト・パーソンにつながるので、とても頼りにしています。彼がAZを、私がCFGを辞めたのがちょうど同じタイミングで、彼とは『僕たちの得意とするスポーツを使って、出島のような日本とオランダの架け橋になろうじゃないか』と話していたんです。実際、今や日本にはクラブごと世界に出ていける力があると思っています。ジェラルドとは、それを一緒に顕在化・具現化させていこうと」
――日本人選手ではなく、日本のクラブがヨーロッパに?
利重「Jクラブのオーナーは日本を代表する大企業や成功したベンチャー企業が多いですし、“選手権(全国高校サッカー選手権)”や“甲子園(選抜高校野球&全国高校野球選手権)”の常連校がヨーロッパで学校やサッカークラブ、総合スポーツクラブを経営する時代が訪れたとみています。Jクラブや学校には常にリクルーティングに向けた差別化が求められますが、出口戦略としてヨーロッパを直接有していれば、大きな武器となるでしょう。
また、この話は昨今語られることの多い日本人選手の海外移籍に伴う違約金(移籍金)が安すぎる問題の解決にも直結しています。現状でも『sell-on条項(移籍した選手がさらに転売された時、かつての保有クラブが移籍金の一部を受け取れる特別条項)』を設けて将来の移籍金の一部を受け取る仕組みなどの工夫はされていますが、ステップアップ先のヨーロッパのクラブを直接保有することで、その後の欧州領域内での移籍(金)をコントロールすることが可能になるわけです。
学校においても、ヨーロッパは総合スポーツ型クラブが多いですから、サッカーに限定されない各種スポーツで海外での挑戦機会を提供できることになり、新入生募集時の大きな武器となるのではないか――。そんな話をここ1、2年日本各所で行なってきました。今のところ考え方にはおおむね賛同いただくのですが、やはり即実行とはならず、であればまずは自分たちでとの流れで、MVVマーストリヒトの経営権取得に至った次第です」
利重「ジェラルドのネットワークを辿るとかならずどの分野でもライト・パーソンにつながるので、とても頼りにしています。彼がAZを、私がCFGを辞めたのがちょうど同じタイミングで、彼とは『僕たちの得意とするスポーツを使って、出島のような日本とオランダの架け橋になろうじゃないか』と話していたんです。実際、今や日本にはクラブごと世界に出ていける力があると思っています。ジェラルドとは、それを一緒に顕在化・具現化させていこうと」
――日本人選手ではなく、日本のクラブがヨーロッパに?
利重「Jクラブのオーナーは日本を代表する大企業や成功したベンチャー企業が多いですし、“選手権(全国高校サッカー選手権)”や“甲子園(選抜高校野球&全国高校野球選手権)”の常連校がヨーロッパで学校やサッカークラブ、総合スポーツクラブを経営する時代が訪れたとみています。Jクラブや学校には常にリクルーティングに向けた差別化が求められますが、出口戦略としてヨーロッパを直接有していれば、大きな武器となるでしょう。
また、この話は昨今語られることの多い日本人選手の海外移籍に伴う違約金(移籍金)が安すぎる問題の解決にも直結しています。現状でも『sell-on条項(移籍した選手がさらに転売された時、かつての保有クラブが移籍金の一部を受け取れる特別条項)』を設けて将来の移籍金の一部を受け取る仕組みなどの工夫はされていますが、ステップアップ先のヨーロッパのクラブを直接保有することで、その後の欧州領域内での移籍(金)をコントロールすることが可能になるわけです。
学校においても、ヨーロッパは総合スポーツ型クラブが多いですから、サッカーに限定されない各種スポーツで海外での挑戦機会を提供できることになり、新入生募集時の大きな武器となるのではないか――。そんな話をここ1、2年日本各所で行なってきました。今のところ考え方にはおおむね賛同いただくのですが、やはり即実行とはならず、であればまずは自分たちでとの流れで、MVVマーストリヒトの経営権取得に至った次第です」