小野監督が明秀日立のコーチも兼任しており、姉も進んだ高校だったこともあって、「明秀日立で全国に出て、上のステージに行きたい」と進学を決意。サッカーを始めてわずか３年で、強豪校の門を叩き、その１年目でチームは全国チャンピオンになった。

「小野さんが教えてくれることは間違いないと思ったし、萬場（努）監督をはじめ、全国優勝した先輩たちも、本当に初心者に近い僕にたくさんのことを教えてくれた。やればやるほど『サッカーってこんなにキツくて、考えることが多いんだ』と思ったし、でも成功した時にめちゃくちゃ気持ちがいい。『サッカーが世界で人気な理由が分かる』と思いましたし、もう難しさも含めてサッカーが大好きになりました」

　必死で周りに食らいつくだけでなく、よりサッカーへの熱意が増したことで、昨年からトップで出場機会を掴むと、ベスト８入りした選手権では初戦の近大和歌山戦、準々決勝の東海大相模戦に途中出場。プレー時間は10分程度だったが、「周りを見たら人だらけで、こんな大勢が見る前でサッカーをやったことがなかったので緊張しましたが、本当に楽しかったし、プレーする責任を感じた」と貴重な全国デビューを経験し、より意識が高まった。
 

「ゲーム展開の把握と予測、身体の使い方、ボールコントロール、立ち位置。それに気持ちの作り方、持ち方など、サッカーは何から何まで奥が深いスポーツ。もっと上手くなりたい、もっと知りたいと思うし、何より『俺ならできる』と強く思えているからこそ、僕はどんなサッカーにも対応できる選手になりたいという理想を持って、一日一日、自分のレベルを上げること、チームに貢献することを第一に考えています」

　今年はエースナンバーの９番を託された。経験を積み重ね、思考しながらプレーする賢さを身につけながらも、斜に構えたり、格好つけたりすることなく、チームのために純粋にボールを追いかけ、ひたむきにゴールに向かう姿勢を持ち続けている。第一学院戦での２ゴールは、まさに鈴木の強い気持ちが滲み出たものだった。

　全国まであと２つ。自らのゴールで２年ぶりのインターハイに導くべく、野性的なストライカーはただひたすらに己の牙を磨いている。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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