今年のインターハイ千葉県予選決勝のカードは、流通経済大柏vs.日体大柏の『柏ダービー』となった。このカードは昨年のインターハイ予選準決勝、選手権予選決勝と同じで、いずれも流通経済大柏が勝利を収めている。

「リベンジしか考えていません。すんなり行かせる気は、まったくありません」

　こう力強く口にしたのが、日体大柏のストライカー小泉ハーディだ。エジプトと日本にルーツを持つ彼は、184センチのサイズと天性のバネを持ち、足もとのボールコントロールに長け、すでにJ２クラブの練習に参加するなどプロ注目の逸材だ。

　１年から出番を掴み、昨年はプリンスリーグ関東２部参入戦で２戦５発・２アシストと大暴れし、プリンス昇格の立役者となった。

　学業も優秀で、日体大柏では特進クラスに所属。アラビア語も話せる父親が日本のオマーン大使館に勤務しながら、アフリカへの人道支援などを積極的に行なっていた姿を目の当たりにしてきたことで、「将来は国際舞台で活躍できる人間になりたい。父がやっていた支援なども引き継ぎながら、自分のやりたいことをやっていきたい」と明確な将来の夢を持っている。

「もちろんプロサッカー選手になれるチャンスがあるなら、積極的に掴んでいきたい。高卒プロだったら、空き時間で勉強を継続できるし、早稲田大のeスクールにAOで受けて両立することもできる。もし、大学に行くことになったら、大学経由でプロを目ざしながら、国際開発経済を学べる大学に行きたい。今は正直、迷っている部分もありますが、まずは夢である全国に出ること。これは何がなんでも成し遂げたいと思っています」

　最終学年を迎え、悲願達成のチャンスはあと２回となった。それだけに今年に懸ける思いは強いが、春先から怪我が続いてしまっている。

　プリンス関東２部開幕から少し離脱して復帰するも、５月の第７節・流通経済大柏Bとの試合で足首を負傷。今予選ではスタメン出場は一度もなく、すべて後半途中から切り札的な形で投入されて試合をクロージングする役割を担っている。

「本当は万全の状態で臨みたかったのですが、それは仕方がないことで、僕はチームの勝利のために何ができるかを考え続けるだけです」
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　専大松戸との準決勝では１－０のリードで迎えた後半16分に投入されると、身体を張ったポストプレーで前線の起点を作った。しかし、チームは徐々に専大松戸の攻勢の前に守備に回ることが多くなり、最後は耐え切った形で勝利を手にした。

「決勝を前に千葉の厳しさを改めて感じました。僕らは市立船橋や流通経済柏を倒して全国に出て優勝するために日体大柏に来ましたが、それは他の高校の選手も一緒。専大松戸が準々決勝で市船を倒して勝ち上がってきても驚きませんでした。

　僕らも勝てば番狂わせと言われてきたし、改めて『やっぱり千葉県は楽じゃないな』と思いました。そう思えたからこそ、今日もみんな気を引き締めて臨めましたし、苦戦しても勝ちきることができたと思います」

　全国まであと１勝のところにまで来た。小泉の脳裏には、中学３年生で日体大柏に入学を決めた後にスタンドで見た、先輩たちが選手権で初出場＆ベスト８に進出した姿が強烈に焼き付いている。

「僕はまだここで一度も全国大会に出たことがない。そこへの憧れは強いけど、構える必要もないし、全力でやってやるという気持ちです。僕が出たら相手が嫌がることをやり続けて、ゴールにこだわって貪欲に狙っていきたい。みんなここ（流通経済大柏、市船）を倒すために来た選手が多いので、怯むことは一切ないし、やるべきことをやるだけです」

　時は来た。チームのために与えられた時間で全身全霊を尽くし、これまで阻まれ続けた壁を越えるべく、小泉ハーディは決戦の舞台に立つ。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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