冷静にチームを客観視する細貝社長。その彼のところにも代理人や海外の知人から頻繁にコンタクトがあるという。引退し、クラブ経営に携わるようになってから、ひっきりなしに電話が鳴っているようだ。

「かつて一緒にプレーしたブラジル人やドイツ人でエージェントをやっている人間も結構いますね。レバークーゼンのスポーツ・ダイレクターを務めているジモン・ロルフェスも元チームメイト。最近も連絡が来ましたけど、他のJ１クラブよりもザスパの方がレバークーゼンとの関係は近そうですね（笑）。

　他の欧州クラブを見ても、スイスのバーゼルにはバレスティン・ストッカーやファビアン・ルステンベルガーもいますし、北欧のクラブとかにも元代表クラスの仲間がいる。その人脈は僕にとってものすごく価値のあるものだし、いずれはクラブのために活かせると思っています。

　そういう関係者から『手取り１億円でいいからザスパで取ってくれ』という話も来ますけど、今はとてもそんなお金は出せない。ただ、経営基盤を強化していけば、いずれは目玉となる外国人選手も獲得できるかもしれない。そうなるように、僕は資金力アップに尽力しなければいけないですし、同時に人脈を活かして良い補強ができるようにも努めていく必要がある。自分がこれまで現役選手として培ってきた財産をいち早くクラブに還元できるようにしていきたいです」
 

　これまで数多くの日本人選手がドイツでプレーしてきたが、ドイツ語での意思疎通がスムーズにできるのは、長谷部誠、原口元気と細貝社長ぐらい。彼が名前を挙げた人々とのネットワークもその努力の上にあるのだ。

　もちろん欧州から選手を連れてくるまでには時間がかかるだろうが、彼はタイでもプレーしており、東南アジア事情にも明るい。インドネシア代表のサンディ・ウォルシュが今季から横浜F・マリノスでプレーしているが、そういった人材を取りにいくことも不可能ではないはずだ。

　インターナショナルな細貝社長のバックグラウンドが今後の移籍市場でどう発揮されるのか。まずは６月のウインドーを注視していきたいところだ。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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