アーセナル移籍の舞台裏――浅野が広島を離れる決断をした理由

カテゴリ:日本代表

中野和也

2016年07月05日

巨額の移籍金を支払った上で完全移籍は、アーセナルの期待の表れ。

浅野は紛糾するスタジアム問題にも言及。「旧市民球場跡地にサッカースタジアムができることをひとりの選手として願っています」。写真:中野香代(紫熊倶楽部)

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「私も、まだ早過ぎると思っていた。いずれは欧州で活躍できる人材だが、広島でもまだレギュラーを確保していないし、まだやることがある、と。でも、アーセナルもアウクスブルクも、認識は違っていた。代表とか成績ではなく、タクマのポテンシャルを高く評価している、と」(足立部長)
 
 国際的な実績に乏しい選手が移籍した例として、宮市亮がいる。だが彼は高校時代にアーセナルのトレーニングに参加し、そこでベンゲルに評価された。
 
 だが、浅野は欧州クラブの練習に参加したことはない。実績はJリーグとU-23におけるアジアレベルだけ。それでも、アーセナルは本気のオファーを届けた。ジェイミー・ヴァーディ(レスター)の獲得に失敗した彼らが、世界的には全く無名の日本人に白羽を当てる。常識では考えられない。
 
 だが、それほどアーセナルは浅野を必要としている。その証拠が、稲本潤一の時のような「期限付き」ではなく、巨額の移籍金を支払った上で完全移籍という契約内容だ。労働ビザ獲得に全力を尽くす姿勢だ。
 
「タクマであればプレミアでなにかをつかみそうな雰囲気を感じています。素直で実直で、昭和のボクサーのようなハングリー精神を持つ彼ならば。だから、私は『行くな』とは言わなかった。ただ『経験を積む』なんて時間は、日本代表にはない。行くなら勝負だ。悩むくらいなら広島に残れ、と」(足立部長)
 
 浅野は自分の気持ちと向き合った。その上で、素直に「行きたい」と思った。世界最高峰のリーグに、アーセナルに挑戦したい、と。
 
「僕にとって広島は特別な街になった。だからこそ、旧市民球場跡地にサッカースタジアムができることをひとりの選手として願っていますし、(移籍金の使い道は)クラブにお任せしていますが、力になりたいと思っています。そしていつの日か広島に戻ってきて、新しいスタジアムで広島のあたたかいサポーターとともに戦いたい」
 
 記者会見で語った浅野の言葉。泣かせる。だからこそ、広島とサポーターは寂しさを押し殺して、若者を送り出す。やれると信じて。実績と栄光に包まれて、戻ってきてくれると信じて。
 
取材・文:中野和也(紫熊倶楽部編集長)
 
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