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名物プロモ部長が南葛SCで描く新たな夢。風間八宏との“ぶっ飛んでいる”ふたりの再タッグで挑む都心クラブでの壮大な計画

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年03月18日

「ぶっ飛んでいる人じゃないと超越したものは作れない」

南葛を指揮する風間監督。観ている人たちを楽しませるサッカーには大きな夢が詰まっている。(C)南葛SC/瀬藤尚美

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 天野氏は風間監督とは川崎時代以来のタッグとなる。Jリーグでも珍しい考え方をする指揮官との間には特別な似た波長が流れているのだろう。南葛からのオファーを引き受けたのも、風間監督の存在も大きかったという。

「ああいう宇宙人大好きなんですよ(笑)。

 スポーツはエンターテインメントだと、これを言い切れる人ってなかなかいないですからね。勝利を目指すことは大前提として、『1-0とかで守る試合を見たい? それだったら豪快にやって負けたほうがまだいいだろう』と。そんなこと言う監督がいるんだと驚きでしたから。

 でもそれくらいぶっ飛んでいる人じゃないと超越したものは作れない。僕も他のクラブにない超越したものを作りたいですからね。今はコンプライアンスが大事という風潮もあるけど、安心・安全は意識しながら、Jリーグ60クラブを含めて他のクラブがやっていることは気にかけず、南葛にしかできない面白いものを作りたい」

 その言葉通り、天野氏は昨季、様々な企画を実現。手始めに京成線の「八広(やひろ)駅」と風間八宏監督をコラボさせ、風間監督が駅員の格好で「葛飾には、八宏がいる。」とのメッセージとともに登場するポスターを作って、「こどもの日スペシャル GO! GO! フェス」と題した5月5日のゲームを宣伝。

 7月のゲームでは「なんかつアニマルパーク“NANKA ZOO”」開催へ今野泰幸らがアニマルペイントで登場し、9月の試合では映画「男はつらいよ」の誕生55周年を記念して『なんかつ寅さんランド』を開催。稲本潤一が寅さんの格好でPRするなど、集客率アップを実現させている。

 もしかしたら、世間的に選手たちを様々なPRに引っ張り出すことに否定的な意見があり、嫌がる選手もいるのかもしれない。その点、「無理強いはダメ」と天野氏も語りつつ、大事なのは目的を共有することだと話す。

「選手に嫌われたくないからってスタッフが意見を言えないのはダメ。選手をたてて、選手のやりたいようにっていう風になっちゃうと、事業の仕事としてはプロとは言えないですよ。

 自分だってイナ(稲本潤一)が鳴り物入りでドイツから川崎に移籍してきた時『これが川崎のやり方。盛り上げたいんだ』って話して、算数ドリルに出てもらったりした。『なんだこの人⁉』って最初は思われていたはずだけど、J2やJ3に移籍した選手からは連絡が来るようになる。『もっとクラブを盛り上げたいんですけどどうすれば良いですか?』『川崎ではどうやっていましたか?』って。

 やっぱり環境が変わると気付くこともあるはずだし、J1のトップオプトップのクラブがそういうことをできていると、周りにも良い影響がある。正直言うと格好悪いと思うんですよ。優勝をして、少しちやほやされると、その気になってしまい、プライドだけが高くなるみたいな姿が。

 そこはもっと高い志を持たないと。自分からしてみれば、シーズンチケットが、それこそ例えばアーセナルみたいに50年、60年待ちぐらいで、ファンクラブが150万人以上いるんだったら話は違いますが、日本のどのクラブもそんな偉そうにしている場合じゃないでしょ。

 だからクラブスタッフはもっと考えなくちゃいけない。言うなれば、選手は最初はまっさらな状態で、その白紙の状況から染まっていくわけで。だからクラブの人間の対応の仕方、接し方って選手にとってもすごく大切だと思うんです。

 例えばサインを300枚書いて欲しいと頼む時に、そりゃ大変な面もある。でもそのサインで喜んでくれる人がいるわけで、選手に伝えていたのは『引退したらサインくださいって、もう認め印ぐらいしかないぞ。これだけ幸せなことあるか?』ということ。クラブ発展のためにも、そういうことを言えるスタッフが多くいないとやっぱりダメですよね。

 強制は良くないですよ。そういう活動が得意な選手と得意ではない選手がいますから。でも色んな企画に関しても自分は私利私欲や趣味のためにやっているわけではない。だから選手にもしっかり『こういうことをやったら、普段は見てくれていないようなこういう層に届くからやりたいんだよ』ってしっかり説明して、楽しくできるような雰囲気を作っている。

 それこそコンちゃん(今野泰幸)も南葛に来るまであまりやったことがなかったと話していましたが、『分かりました』と引き受けてくれた。

『南葛サウナクラブ』の活動もしていますが、これも参加は義務ではないけど、市民や区民の方々と接することの重要性を選手たちが理解してくれている。何より大きかったのは大前元紀が参加してくれたこと。元紀は自分でも影響力を分かっていて、やってくれる彼の男気、心意気に自分らは応えなきゃいけない。

 その意味では企画を考え、実現していく努力は改めて必要で、汗をかいて頑張らなくちゃいけない。そこを伝えていかなくちゃいけないとも思いますね」
 改めて天野氏は南葛での新たな挑戦を「めちゃくちゃ充実していますよ。原点回帰じゃないですけど、川崎の時もこんな感じだったなって思いながらやっていますから」と笑顔を向ける。

 ただ異なるのは、南葛は首都・東京にあるクラブだということ。

「23区内ってサッカー、スポーツが、まだ町作りとして活かし切れていないエリアだと思うんです。でも東東京でも人口は300万人もいる。そう考えればポテンシャルしかない。周りに雷門とかスカイツリーとかエンターテインメントがたくさんあるけど、だからこそ、スポーツでの盛り上げをできれば、スポーツを文化にできれば、南葛が前例を作ったことになる」

 一方で南葛で実現したいのはバトンをつなぐことも含まれる。昨季限りで引退し、プロモーション部の副部長を務める楠神順平らとはよくディスカッションをしているという。

「自分だって(風間)八宏さんだって永遠にいられるわけじゃない。自分がいる間にやっぱり基礎みたいなものはしっかり作りたい。でも、川崎時代も自分が抜けたとしてもできるように色んなマニュアルみたいなモノは残したんですよ。でも難しい部分があった。だからこそ、ここでも伝えながら、多くを学んでもらえればと思いますね」
 
 印象的だったのは、昨年、天野氏がプロモーション部長に就任した際、チームの前で、数人の選手と、キャプテン翼の主題歌「燃えてヒーロー」を振付とともに熱唱したことだ。

「一発で心を掴まなくちゃいけないから。じゃなかったら、最初に会った時に歌なんか歌わないよ(笑)。でも、ああいう風にすることで、自分のキャラクターを理解してもらえるし、変なやつが来たぞと印象づけられる。別にカラオケが好きなわけじゃなく、でも、変な話、あれもプロ意識の部分でもある。

 だからお祭りなどに参加させてもらった時だって同じ。ポケットに手を突っ込みながらただ立っているだけじゃなく、自分たちが任されたブースを何より盛り上げる。そうすれば『お、南葛の人って頑張っている。これだけやってくれるんだから応援してみよう』という気になってもらえるかもしれない。そうやって互いを理解し、手を取り合っていくことが何より大切ですよね」

 天野氏のそうした背中は後進たちの指針になるに違いない。

 南葛の挑戦はまだ始まったばかりだ。でも、ポジティブなエネルギーに満ちており、笑顔が溢れている。サッカー好きな人も、そうでない人も、一度、南葛の試合を訪れてみてはどうだろうか。きっと何か発見があるはずだ。

(全2回/このシリーズ了)

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

■南葛SCの今後のスケジュール こちら
https://www.nankatsu-sc.com/match-result
 
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