JFL昇格を目指しつつ何より大事なことは...
1年目でベースを築き、さらなる発展を目指す風間体制2年目。狙うはやはりJFL昇格だ。
ただそのハードルは低くなく、しかも大事なことをないがしろにして無理矢理に昇格しても意味がない。重要なのは、人々を魅了するサッカーを構築することであり、そのうえで、強さも身に付けていく。岩本GMも話す。
「正直このカテゴリーは最後のところは運要素も強いんです。リーグ戦で優勝しただけでは昇格できず、最後は全国9地域の優勝チームと、プラス3チームが出場する大会(全国地域チャンピオンズリーグ)を勝ち上がらなくてはいけない。しかも、その戦いはグループリーグは3日連続3試合、決勝ラウンドは1週空けて1日おきに3試合、計6試合を絶対に戦わなくちゃいけない。その過密日程の6試合で昇格を掴むには、運要素も必要になります。
(2025年からJ3に昇格した)栃木シティもずっとそこで躓いていましたよね。だから我々が、一発でクリアできる保証はなく、そういう意味でも、慌てずに、でもちゃんとやるべきことやって繰り返していくしかないかなと」
一歩ずつ。それでも描く夢は壮大だ。
「クラブとして凄く大きかったのは、(2024年の3月)新小岩のスタジアム建設へ、土地の取得を葛飾区が行なってくれたこと。葛飾区は土地の所有者と協定を結び、予算も組んでいただいていましたが、土地の取得が完了しないことにはどうなるか分かりませんでした。それを葛飾区が実際に325億で購入してくれました。金額交渉を含め凄くハードだったと思うので、成し遂げてくれたことに本当に感謝しています。
まだ詳細なスケジュールは決まっておらず、2024年度は基礎調査の1年でしたが、スタジアムプロジェクトは一歩ずつ前進していると感じています。そもそも、東京23区でJ1基準のスタジアム(1万5000人規模、キャプテン翼をテーマにしたミュージアムなども建設予定)が具体的に進んでいるのは初めてのこと。スタジアムに関しては、自分たちの頑張りだけではどうにもできない部分でもあったので、本当にありがたいです。東京は地価の関係でスタジアムを造るのは非常に難しい。ひとえに高橋(陽一)先生と葛飾区の良好な関係性のお陰でもあります。
新小岩駅近くにスタジアムができれば東京駅から最も近いスタジアムになるはずです。そうすればアウェーサポーターの方も足を運びやすいはずですし、多くのメリットがあると考えています。
それに昨年引退を決めましたが、稲本(潤一)が来てくれ、この3シーズン、プレーとともに様々な活動をしてくれたのも大きかったです。その1年前にはカズさん(三浦知良)にオファーもしていたんです。高橋先生にも、カズさんが個人キャンプをしている大阪まで直接会いに行ってもらいました。カズさんの入団は叶わなかったですが、稲本は現役最後の場所に南葛を選んでくれた。
彼は最後の1シーズンは怪我に泣きましたが、その前の2年はしっかり試合に出てくれました。だから客寄せパンダではなく、40歳を超えてもハードにやってくれる姿を見せてくれた。彼が来てくれたお陰でより盛り上がりましたね」
ただそのハードルは低くなく、しかも大事なことをないがしろにして無理矢理に昇格しても意味がない。重要なのは、人々を魅了するサッカーを構築することであり、そのうえで、強さも身に付けていく。岩本GMも話す。
「正直このカテゴリーは最後のところは運要素も強いんです。リーグ戦で優勝しただけでは昇格できず、最後は全国9地域の優勝チームと、プラス3チームが出場する大会(全国地域チャンピオンズリーグ)を勝ち上がらなくてはいけない。しかも、その戦いはグループリーグは3日連続3試合、決勝ラウンドは1週空けて1日おきに3試合、計6試合を絶対に戦わなくちゃいけない。その過密日程の6試合で昇格を掴むには、運要素も必要になります。
(2025年からJ3に昇格した)栃木シティもずっとそこで躓いていましたよね。だから我々が、一発でクリアできる保証はなく、そういう意味でも、慌てずに、でもちゃんとやるべきことやって繰り返していくしかないかなと」
一歩ずつ。それでも描く夢は壮大だ。
「クラブとして凄く大きかったのは、(2024年の3月)新小岩のスタジアム建設へ、土地の取得を葛飾区が行なってくれたこと。葛飾区は土地の所有者と協定を結び、予算も組んでいただいていましたが、土地の取得が完了しないことにはどうなるか分かりませんでした。それを葛飾区が実際に325億で購入してくれました。金額交渉を含め凄くハードだったと思うので、成し遂げてくれたことに本当に感謝しています。
まだ詳細なスケジュールは決まっておらず、2024年度は基礎調査の1年でしたが、スタジアムプロジェクトは一歩ずつ前進していると感じています。そもそも、東京23区でJ1基準のスタジアム(1万5000人規模、キャプテン翼をテーマにしたミュージアムなども建設予定)が具体的に進んでいるのは初めてのこと。スタジアムに関しては、自分たちの頑張りだけではどうにもできない部分でもあったので、本当にありがたいです。東京は地価の関係でスタジアムを造るのは非常に難しい。ひとえに高橋(陽一)先生と葛飾区の良好な関係性のお陰でもあります。
新小岩駅近くにスタジアムができれば東京駅から最も近いスタジアムになるはずです。そうすればアウェーサポーターの方も足を運びやすいはずですし、多くのメリットがあると考えています。
それに昨年引退を決めましたが、稲本(潤一)が来てくれ、この3シーズン、プレーとともに様々な活動をしてくれたのも大きかったです。その1年前にはカズさん(三浦知良)にオファーもしていたんです。高橋先生にも、カズさんが個人キャンプをしている大阪まで直接会いに行ってもらいました。カズさんの入団は叶わなかったですが、稲本は現役最後の場所に南葛を選んでくれた。
彼は最後の1シーズンは怪我に泣きましたが、その前の2年はしっかり試合に出てくれました。だから客寄せパンダではなく、40歳を超えてもハードにやってくれる姿を見せてくれた。彼が来てくれたお陰でより盛り上がりましたね」
さらに前述したように天野氏がプロモーション部部長に就任した影響もあり、平均観客数も増えている。関東1部のチームとしては異例とも言える。
「天野さんが入ってくれたことによって、単純な数字の部分でも影響がありました。奥戸(葛飾区奥戸総合スポーツセンター陸上競技場)のホームゲームでの観客動員数は150パーセントアップですから。コロナ禍では努力目標でしたが、JFLからJ3に上がる条件として1試合平均2000人を超えなきゃいけないとの要項が復活しました。この条件に多くのクラブが苦しんでいます。
でも南葛の場合は現状、奥戸の試合で平均1500人の方々に来場していただいており、JFLに上がった際には西が丘や新国立でも試合を開催できれば、間違いなく平均2000人は超えられます。
この平均2000人を超えなくちゃいけないというルールは、目的がずれちゃいけない。我々としては2000人を入れるのが目標じゃなく、新スタジアムが5年後などにできた時にそこを超満員にするのが1番大事なことです。
そういう意味ではこの下町のパートナー企業を増やすことも大事で、ありがたいことに今パートナー企業は350社を超えましたが、そのうちの250社ほどはこの葛飾の下町エリアの会社に支えていただいています。
天野さんに来ていただいて良かったと思えたのは、フロンターレなどでのノウハウも然ることながら、とにかくロジカルなんです。目的が明確で、熱気を生むために、スタジアムに“怒”の感情はいらないという話もされています。お祭りの場にすることによって南葛をとことん楽しんでもらうってところに取り組んでもらっています。天野さんを中心にプロモーション部を作りましたが、2025年からは昨年引退した楠神(順平)が副部長として加わりました。凄く伸びしろがあると感じますね。
またクラブにとっては地域の子どもたちの存在も大切で、ドリームパスという制度も取り組んでいます。Jリーグのいくつかのクラブもそれに近いものやっていますが、子どもたちの入場料を、パートナー企業の皆さんに補填してもらうものです。2024年では1000人以上の子どもたちが登録してくれてスタジアムに足を運んでくれました。
地域にとって子どもたちは未来であり、それはクラブにとっても同じです。だからこそ、一度、スタジアムに来てもらい南葛の魅力を知ってもらう。そうしたらゆくゆくは彼らが、南葛を支えてくれる存在になるかもしれない。それこそ新スタジアムができる時には、今の子たちが高校生くらいになっているかもしれず、応援の中心にその姿があったら素晴らしいですよね。
今でも他のクラブとの兼任で応援してくれる方も大歓迎です。でも将来的には、やっぱり南葛SCを一番に応援してもらえるよう、魅力を伝えていきたい。葛飾に縁がある子どもたちこそ、大切な存在ですからね」
サッカーの質を追い求めながら、地域密着も決して忘れない。ではその地元の人々と先頭を切って触れ合っている天野氏は南葛にどんな可能性を感じているのか。その想いにも迫る。
(第2回に続く)
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
■南葛SCの今後のスケジュール こちら
https://www.nankatsu-sc.com/match-result
「天野さんが入ってくれたことによって、単純な数字の部分でも影響がありました。奥戸(葛飾区奥戸総合スポーツセンター陸上競技場)のホームゲームでの観客動員数は150パーセントアップですから。コロナ禍では努力目標でしたが、JFLからJ3に上がる条件として1試合平均2000人を超えなきゃいけないとの要項が復活しました。この条件に多くのクラブが苦しんでいます。
でも南葛の場合は現状、奥戸の試合で平均1500人の方々に来場していただいており、JFLに上がった際には西が丘や新国立でも試合を開催できれば、間違いなく平均2000人は超えられます。
この平均2000人を超えなくちゃいけないというルールは、目的がずれちゃいけない。我々としては2000人を入れるのが目標じゃなく、新スタジアムが5年後などにできた時にそこを超満員にするのが1番大事なことです。
そういう意味ではこの下町のパートナー企業を増やすことも大事で、ありがたいことに今パートナー企業は350社を超えましたが、そのうちの250社ほどはこの葛飾の下町エリアの会社に支えていただいています。
天野さんに来ていただいて良かったと思えたのは、フロンターレなどでのノウハウも然ることながら、とにかくロジカルなんです。目的が明確で、熱気を生むために、スタジアムに“怒”の感情はいらないという話もされています。お祭りの場にすることによって南葛をとことん楽しんでもらうってところに取り組んでもらっています。天野さんを中心にプロモーション部を作りましたが、2025年からは昨年引退した楠神(順平)が副部長として加わりました。凄く伸びしろがあると感じますね。
またクラブにとっては地域の子どもたちの存在も大切で、ドリームパスという制度も取り組んでいます。Jリーグのいくつかのクラブもそれに近いものやっていますが、子どもたちの入場料を、パートナー企業の皆さんに補填してもらうものです。2024年では1000人以上の子どもたちが登録してくれてスタジアムに足を運んでくれました。
地域にとって子どもたちは未来であり、それはクラブにとっても同じです。だからこそ、一度、スタジアムに来てもらい南葛の魅力を知ってもらう。そうしたらゆくゆくは彼らが、南葛を支えてくれる存在になるかもしれない。それこそ新スタジアムができる時には、今の子たちが高校生くらいになっているかもしれず、応援の中心にその姿があったら素晴らしいですよね。
今でも他のクラブとの兼任で応援してくれる方も大歓迎です。でも将来的には、やっぱり南葛SCを一番に応援してもらえるよう、魅力を伝えていきたい。葛飾に縁がある子どもたちこそ、大切な存在ですからね」
サッカーの質を追い求めながら、地域密着も決して忘れない。ではその地元の人々と先頭を切って触れ合っている天野氏は南葛にどんな可能性を感じているのか。その想いにも迫る。
(第2回に続く)
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
■南葛SCの今後のスケジュール こちら
https://www.nankatsu-sc.com/match-result