• トップ
  • ニュース一覧
  • 未曽有の経営危機で高まる結束――。日本人CEO、ベルギーの小クラブ、そして地元サポーターの語り継がれるべき物語【現地発】

未曽有の経営危機で高まる結束――。日本人CEO、ベルギーの小クラブ、そして地元サポーターの語り継がれるべき物語【現地発】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2024年09月26日

「1部昇格も、クラブの永続的存続も、俺たちは諦めてない」

飯塚CEOは「あらゆるネットワークを駆使して解決策を探しています」と話す。クラブを取り巻く人びとが一丸となって難題に挑んでいる。写真:中田徹

画像を見る

 ピッチに目を向けると、今季のデインズは「2部リーグ優勝候補筆頭」という声もあるほど、戦力が充実している。今夏から指揮を執るのはエルナン・ロサーダ。ベールスホットを率いた2020年、年間最優秀監督賞で2位に輝いた攻撃サッカーの信奉者だ。

 このデインズ・プロジェクトをACAFPが立ち上げた最初の2022-23シーズンは開幕から躓き、一時は最下位に沈んだものの、後半戦で持ち直したことによって「1部昇格プレーオフ」進出まであと一歩のところまで迫った。昨季(23-24シーズン)は終盤、首位に浮上したものの勝点1足りずに最終リーグ3位となり、惜しいところで自動昇格を逃した。

「デインズはスポーツ的にはベルギー国内での評価が高まっており、優秀な選手たち、優秀な指導者の方たちが集まってきてます。この問題が公になる前、我々は(資金繰りの面から)ひとり選手を売らざるを得なかったのですが、売却益の余剰金で必要最小限の戦力をうまくふたり、パズルをしながら獲得しました。次の投資家さんを見つけるためにも、チームの競争力を下げてはいけない。さらに『我々はまだ諦めてない』というメッセージをみんなに示したかったのです」

 メインスタンドで話をしていると、ファンたちが飯塚CEOに近づいてきた。「今、私は話をしている最中ですので」と断っても「俺たちはお前がベストを尽くしているのを分かっている」「頑張れよ」「アキ! アキ!」と意に介せず彼らは喋り続け、去り際には左胸に手を置きクラブ愛を示してから、飯塚CEOと抱擁をかわした――。この2年半に渡ってサポーター、スポンサーとダイレクトな関係を築き上げたからこそ、未曾有のクラブ経営の危機に彼らは飯塚CEOの味方に回ってくれるのかもしれない。

「こういう危機的状況の時は、やっぱりみんなで結束することが重要です。そういう意味で、選手たちともすべて透明性をもって話しますし、パートナーさんたちとも『こういう状態です』と隠すことなく全部話してます。その上で、お支払いに関してのところも頭を下げながら『なんとか待ってください』とお願いしています。なんとか、そこから先の道筋を見つけたいので、今は私や他スタッフが持っているあらゆるネットワークを駆使して解決策を探しています」

 彼が「本当にありがたい」としみじみ語るのは、クラブステートメントが出てから、スタッフたちがとても明るく振る舞って「今できることを全力でやろう」と頑張ってくれていること。

「それはビジネス・スタッフだけでなく、ユースアカデミーの人たちも一緒。『クラブは今、こんな状態だけど、頑張ろう』とみんなが言ってくれるんです。そんな彼らのためにも、なんとか道筋をつけたいです」
 
 その後、一緒にスポンサールームに顔を出すと、人びとが飯塚CEOの元に寄ってきて励ました。なかには私にも明るく自己紹介をしてくれたスポンサーもいた。

「彼は良い時も悪い時も、来てくれます。特にクラブが難しい状況になると、いつも応援に駆けつけてくれて、シャンパンやワインを何本か注文してくれるんです。そういうのが本当にありがたい」

 5節を終え、デインズは首位RWDM、2位ラ・ルビエールと勝点3差の3位とまずまずの位置につけている。今こそピッチの中と外で団結して、苦境を乗り越えるとき。

「1部昇格も、クラブの永続的存続も、俺たちは諦めてない」。そんなメッセージをスタジアムの至るところで感じることのできた、デインズのホームゲームだった。

取材・文●中田 徹

【画像】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの悩殺ショットを一挙お届け!

【画像】スーパーモデル級の美貌! 名将ペップの愛娘、マリア・グアルディオラの悩殺ショット集をお届け!
【関連記事】
「日本人ばっかり出して」「弱いじゃないか!」ファンが不満を抱いたSTVVが100周年で挑む“ユース育成改革”の全容~立石敬之CEOに訊く【現地発】
「Jリーグに帰ることになるかと…」欧州3年目、好機を掴んだ日本人SBの存在感がベルギーで増大中! 支えてくれた“同胞レジェンド”に感謝【現地発】
「欧州組を呼ぶ意味がよく分かった」NEC小川航基が森保ジャパンから得た“リアルな刺激”「自分も食い込んでいきたい」【現地発】
「稼げる、収益を考えられる、クラブに還元できる」“小笠原満男・命”だった少女が欧州クラブでバリバリ活躍する敏腕広報に成長を遂げるまで【現地発】
断トツ最下位だったコルトレイクを1部残留に導いた藤井陽也。指揮官も「お前はもっと上でやれる」と太鼓判を押す特大のポテンシャル【現地発】

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ