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公式戦いまだ無敗の衝撃!クラブ史上初のブンデス優勝も現実味を帯びるレバークーゼンの何が凄い?【戦術エキスパートが徹底解剖|後編】

カテゴリ:ワールド

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2024年04月06日

強さを支える武器であり躍進の秘密とは?

このバイエルン戦のボール支配率はわずか39%。相手にボールを委ねながらも効果的な逆襲で3ゴールを奪い、完勝した。(C)Getty Images

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 レバークーゼンの特徴は、一旦敵陣までボールを運んだ後は、ハーフウェーラインを大きく越えたところまでコンパクトな陣形を押し上げ、5~6人、多ければ7人をファイナルサードに送り込むところ。3バックの3人がセンターサークルを越えたところまで上がっているケースも珍しくない。
 
 これは攻撃に人数をかけるという以上に、ボールロスト時に複数の選手が素早くボールホルダーに襲いかかって即時奪回する、いわゆるゲーゲンプレッシングを効果的に機能させることを大きな狙いとしている。
 
 ファイナルサード攻略が中央からの崩しに特化しているのも、ボールを失ってもすぐに奪回できるだけの密度を保てるから。これがもうひとつの理由だ。事実、敵陣に押し込んだ時点で、3人のアタッカー、2人のセントラルMF、そして3バックという8人が中央3レーンに集まっている。
 
 このゲーゲンプレッシングの強度の高さ、敵陣でのボール奪取数の多さは、レバークーゼンの強さを支える大きな武器であり、躍進の秘密であると言ってもいい。実際、敵陣ラスト40mでのターンオーバー(ボールを奪って攻守が逆転した)数248は群を抜いてリーグトップ。そのうちシュートで終わったアクション数も50回でリーグトップだ。
 
 コンパクトな陣形を敵陣深くまで押し上げ、中央からのコンビネーションによってフィニッシュを狙う攻撃のメカニズムは、そのままゲーゲンプレッシングによる即時奪回からの再攻撃という守備のアクションを支える土台にもなっている。平均60%を超えるボール支配率の秘密もまたそこにある。
 
 この「後退せず前に出る守備」は、ボールロスト時だけでなくボール非保持時、相手のビルドアップに対するプレッシングにも当てはまる。ブンデスリーガの多くのチームがそうであるように、レバークーゼンも相手のビルドアップに対しては前線からマンツーマンで強度の高いハイプレスを仕掛けていく。3人のアタッカーが中央のパスコースを塞ぐ形でプレッシャーをかけることでボールをサイドに誘導、そこでさらにプレスの強度を上げて追い詰め、ボールを奪うか、そうでなくともミスを誘うのが狙いだ。
 
 このアグレッシブな守備戦術には、ラルフ・ラングニックが編み出した「レッドブル・メソッド」の影響が強く感じられる。
 
 後方からのビルドアップとポゼッションによるボールと地域の支配、中央からのコンビネーションに軸足を強く置いたファイナルサード攻略、ゲーゲンプレッシングとハイプレスによる「前に出る守備」という組み合わせは、シャビ・アロンソ監督がかつてその下でもプレーしたグアルディオラの影響を強く感じさせるものだ。
 
 しかし、このレバークーゼンの美点は、そうした先鋭的なスタイルだけでなく、相手と状況に応じて異なる戦い方を選び、それを効果的に機能させる戦術的柔軟性も兼ね備えているところ。それを象徴するのが、最初に取り上げたバイエルン戦だった。この試合のボール支配率はわずか39%。バイエルンにボールを持たせながらも、堅固な5-2-3のブロックを敷いてラスト30mにはほとんど侵入させずにはね返し――ケインが良い形でボールを持つ場面は皆無だった――、そこから効果的な逆襲でゴールを奪って3-0の完勝を演じたこの試合は、レバークーゼンのチームとしての成熟度を示すものだった。
 
 本格的な監督キャリアにおいて率いた最初のチームであるレバークーゼンを、就任からわずか1年半でこれだけの完成度、成熟度に導いたという事実は、シャビ・アロンソがどれだけ優れた手腕の持ち主かを物語る証左だ。かつてのグアルディオラがそうだったように、新世代の旗手として欧州サッカーで長く主役を演じる存在になることを期待したい。
 
文●レナート・バルディ(イタリア代表マッチアナリスト)
翻訳●片野道郎
 公式戦いまだ無敗の衝撃!クラブ史上初のブンデス優勝も現実味を帯びるレバークーゼンの何が凄い?【戦術エキスパートが徹底解剖|前編】
【著者プロフィール】
レナート・バルディ(Renato BALDI)/地元のアマチュアクラブで育成コーチとしてキャリアをスタートし、セリエBのランチャーノ、バレーゼで戦術分析を担当。ミハイロビッチがサンプドリア監督に就任した際にスタッフとなり、ミラン、トリノ、ボローニャにも帯同した。現在はイタリア代表のマッチアナリストを務める。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2024年3月21日号の記事を加筆・修正
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