冨安健洋（アーセナル）が「まずはクリーンシート」と繰り返し強調した通り、次のバーレーン戦こそ失点ゼロで乗り切ること。そうすれば、鈴木も自信を深め、勢いに乗って上のステージに進んでいけるだろう。

　バーレーンは４バックがベース。前線にはGS最終節のヨルダン戦で決勝点を叩き出した194センチの長身FWアブドゥラ・ユスフが陣取り、両サイドのアリ・マダン、モハメド・マルフーンも縦への推進力は凄まじい。最終ラインからのロングフィードも正確だ。

　そういった難敵に対し、カウンター対策、ロングボール対策を徹底しなければ、１－２で敗れたイラク戦の二の舞になりかねない。それだけは鈴木を中心に確実に阻止しなければならないだろう。

「勢いを持ってくるっていうのは当然ですけど、それに飲まれないというより、上回る気持ちでプレーしなきゃいけないと思います。周りの環境を気にせず、自分たちのサッカーを貫きたいですね」

　本人もこのように言い聞かせていたが、すでにここまで３試合を消化。中東のビッグトーナメント特有の雰囲気や相手の出方には慣れたはず。その経験値を一発勝負の決勝トーナメントに活かさなければ意味がない。「GKの出来が日本の命運を左右する」と言っても過言ではないだけに、堂々とピッチに立ってほしいものである。
 

　偉大な先人である川口も川島も数々のミスを繰り返し、それを糧にして、アジア王者となり、W杯にも４度出場した。若く能力の高い鈴木は彼らの背中を追いかけ、超えていけるだけのポテンシャルがある。

　それは誰もが認めるところ。森保一監督が「彩艶には成長してもらいたいので、あえて試練を与えている」と期待を込めて起用していることを彼自身もしっかりと受け止め、大きな仕事で恩返しすることが重要だ。

「まだチームを救えてないっていうところはあるので、いつか救えると信じてプレーするだけかなと思います」

　その誓いを実行に移すべきは今。まずはバーレーン戦でひと味違う鈴木彩艶の雄姿を見せてもらいたいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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