互いに勢いがある一方で、志向するサッカーのスタイルは180度異なる。「うちは守備が武器」と正木昌宣監督が胸を張ったように、青森山田の生命線は強度の高いディフェンスだ。対する近江は3－4－2－1の布陣で、流動的なポジションから仕掛けてくる攻撃的なサッカーが売り。キャプテンのDF金山耀太（3年）も含め、ボールを運べる選手が各ポジションに揃っており、予測不可能な仕掛けがチームの躍進を支えてきた。

　勝負のポイントを挙げるとすれば、青森山田の守備を近江の攻撃陣が打ち破れるか。7日の前日練習で、青森山田の主将のCB山本虎（3年）は「10番（金山）のところにボールが入ったら、スイッチが入る」と警戒。青森山田からすれば、いかに金山にボールを入れさせないかが重要になる。

　準々決勝まではCB、準決勝は左ウイングバックでプレーした金山。山本は「前からプレスに行けば、取れるはず。いつものように前線からプレッシャーをかけていきたい」と意気込む。

　ただ、前から行くだけでは意味がない。前線と中盤が連動する必要があり、単騎でボールを追う状況だけは避ける必要がある。そこで外されれば、中盤にスペースが生まれてしまう。空いたところに近江の選手が入ってくる展開になれば、相手の前進を止めるのは難しくなるはずで、飲み込まれる可能性が大きくなる。
 

　そうした状況を踏まえつつ、もう1つのポイントは先制点をどちらが挙げるかだ。特に近江は早い時間帯に先手を取りたい。先行すれば青森山田は前に出ざる得なくなり、近江からすれば背後のスペースを使いやすくなる。

　逆に早々に失点すれば、青森山田は守備に比重を置くことが可能になり、ブロックを打開する作業が難しくなるはず。試合運びを楽にするためにも、近江は早い時間帯でゴールを奪いたい。

　運命のキックオフは８日の14時５分。常勝軍団と新興勢力が覇権を争う真冬のビックマッチから目が離せない。

取材・文●松尾祐希（サッカーライター）

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