前節のRWDM戦を０－３の完敗で落とした後、フィンク監督の「他の選手に言うより、自分に矢印を向けろ」という言葉を忠実に守って、鈴木はシャルルロワ戦でクリーンシートを記録した。試合を通じて枠内被シュートはゼロ。あらかじめＤＦを動かして、ピンチを作らないというのもＧＫのあるべき姿だ。

「コーチングで防いで、ボールを（自陣ゴール前まで）来させない――というのが一番（の守備）だと思うので、今日はそういったところではできたかと思います」

　RWDM戦の３失点のうち、「１点目、２点目は自分が防ぐことができた」と分析して、シャルルロワ戦に向けて修正したという。もうひとつ「受け身になりすぎた自分がいた」ということにも気付いた。

「例えば攻撃の部分でも、自分の強みを出すより、監督が求めているサッカーをしようとしすぎた。『自分の強み』と『監督のしっかりパスをつなぐサッカー』を交えながらやりたい」

『自分の強み』とはロングキック。STVVはＧＫからショートパスをつなぎ、ボールを前に運ぶチーム。しかし、時には、自身の武器を織り交ぜることも必要なのではないか――と鈴木は思いを巡らす。
 

　伊藤と鈴木は元日の対タイを戦う日本代表のメンバーに選出された。伊藤は６月11日の新潟退団セレモニーの「次皆さんとお会いするときには日の丸を背負っていたいと思います」という誓いを半年後、国立競技場で実現する。

「選ばれるだけじゃなくて、しっかりと何か爪痕を残せるようなプレーをしたい」

　鈴木は『クロスへのアタック』『シュートストップ』『チャンスにつながるキック』といったストロングポイントを出し切る覚悟だ。そして個性派GKらしく言う。

「いいシーンだけでなく、ミスも含めて自分らしいプレーをしたい。見ている人が、『鈴木彩艶がプレーしているな』と言うようなプレーをしたいです」（鈴木）

取材・文●中田 徹

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