これまで、鹿島の下部組織出身選手の多くは、J１で偉大な実績を残すトップチームに畏怖にも似た感情を持ち、ベンチに入った時点、試合に出た時点で満足していた。その点、鈴木の場合は「出た」「決めた」という次元ではなく、「チームを勝たせられる選手になる」という高い目標を据えている。
 
　小笠原満男や内田篤人がそうであるように、「勝つための」選択をし続け、勝利にたどりつくことこそが、鹿島戦士の使命であり、自分の価値を高められる手段と考えているのだ。
 
　ポジションを争う金崎夢生にも「あの人よりも多く点を取る」と豪語する。やんちゃそうな顔つきから、一見、先輩にかみついている若手と見えるかもしれない。だが、鈴木は頭のなかで理解しているからこそ、こうした発言をするのだ。金崎を超えなければ、先発11人に入れない状況を。そして、実績がない分、結果で上回らなければ、ポジションを奪えないことを。
 
　デビューから半年。鈴木がプレーするたびに、リオ五輪の代表候補に推す声が大きくなっていく。「申し訳ないけど、意識はしていない」と断言する鈴木は「鹿島で三冠を獲る」ことを優先し、日々サッカーと向き合っていくことを心に決めている。
 
　少年野球よりも、サッカー少年団に子どもたちが集まる時代。卓越した技術で注目される若手は、Jリーグでも毎年のように現れる。鈴木の個性は、それとは明らかに一線を画す。プレーそのものは、決して華麗や優雅の類いではないが、強いハートでゴールに、ボールに向かっていく背中が、大きな可能性を感じさせる。