「怪我の期間は僕にとって多くの学びがある期間でした」と口にしたように、際立つパフォーマンスを示せたのは、彼が精神的に大きく成長をしたからであった。試合に出られない間、練習や試合の準備、片付けを率先して行なった。意識的に取り組み、神田は大切なものを再認識したという。

「もちろん、これまでも僕らが練習しやすい環境を作ってもらったり、試合に集中できる環境を作ってもらったりすることに対して感謝の気持ちは持っていたつもりでした。でも、こうして自分がプレーできない状態になって、『どうやったら仲間がスムーズに練習や試合ができるのか』と考えれば考えるほど、いろいろなところに気がついて、『本当に自分は練習や試合で何不自由なくプレーできているのは、誰かの支えがあってプレーさせてもらっているのだな』と、改めて感じるようになりました」

　感謝の気持ちは持っていたが、どこかで支えてもらっている立場が当たり前のようになっていた自分がいた。そこに気付けた神田は、よりチームのために行動することの大切さ、ピッチに立った時には献身的かつ前向きなプレーが必要だと実感している。

「選手権予選もそうですが、プレミアでもみんなが優勝争いを続けてくれたからこそ、プレミアファイナル出場の可能性が残った状態で復帰できました。みんなに“プレミア優勝と選手権優勝を目ざせる立場”にさせてもらったと思っているので、感謝しかありません」
 

　そのうえで神田が大事にしている意識がある。それは、復帰したからといってレギュラーが保証されている立場ではないということだ。

「僕がいるのは勝負の世界ですし、チームには良い選手がたくさんいるからこそ、僕は一からもっともっとやらないとスタメンを勝ち取れないと思っています。競争の中でみんなの信頼を勝ち取るためには、チームのためにゴールを決めないといけない。プレミアでも選手権でも、仲間が作ってくれたチャンスをモノにすることが僕の役割なので、１本も無駄にしないようにしたいと思います」

　スタメン争いのスタートラインに立った神田が見つめるのは、勝利に繋がるゴール。ワンプレー、ワンプレーへのこだわりと強い意識が、彼をより成長させるはず。笑顔の奥にある貪欲さと責任感、覚悟。腹を決めたストライカーの成長は止まることを知らない。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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