待ちに待ったエースストライカーがピッチに帰ってきた。

　高円宮杯プレミアリーグWEST第21節の静岡学園対ジュビロ磐田U-18の一戦。川崎フロンターレ入りが内定している静岡学園のFW神田奏真が、両足の甲の手術から約３か月ぶりの実戦復帰を果たした。

　この試合、３位につける静岡学園にとっては勝たなければ優勝戦線から置いていかれるという重要な一戦だった。神田が投入されたのは、０－１で迎えた74分のこと。FW大木悠羽に代わって１トップに入ると、磐田U-18の意識が彼に傾くようになり、徐々に周りの選手が前を向いてボールを持てるようになった。

　神田は85分に味方DFのクリアボールを前線でジャンプしながら胸で捉え、駆け上がってきた２列目の選手に正確に落とす。90＋４分には右サイドでDFを背負ってボールを受けると、そのまま鋭いターンで前を向いて右サイドを破った。

　持ち前のフィジカルの強さとしなやかさを駆使したポストプレーの精度とターンスピード、前への推進力を発揮する神田は、限られたプレータイムのなか、フリーランニングだけでチームを勝利に導いた。

　90＋７分、神田は右サイドの崩しの際にゴール前のスペースに走り込み、相手のマーク２枚を引きつけた瞬間に、MF天野太陽がペナルティエリア内右で前向きにボールを受けた。マークが遅れた隙を突いて、天野は右足を一閃。ボールはゴール左隅に突き刺さった。
 

　これで勢いに乗った静学は90＋９分に、再び右サイドの崩しから10番の高田優にボールが渡った瞬間、神田が同じようにゴール前に走り込んでDFを引き付けた。

「奏真に気を取られてくれたおかげでシュートコースが完璧に空いた」と高田が語ったように、高田は得意の左足で技ありシュートをゴール左隅に突き刺し、静岡学園が劇的な逆転勝利。３位をキープし、最終戦の２位・ヴィッセル神戸U-18との直接対決に逆転優勝の可能性を残した。

「最初に川口（修）監督に『メンバーには入れるけど、出場するかは分からない』と言われていたので、呼ばれた時は驚きがありました。でも、この仲間と一緒にサッカーができるのも残りわずかなので、少しでも一緒にサッカーがしたいなと思っているので、出場できてものすごく嬉しかったです」

　この言葉通り、ピッチに入る時に神田の表情は満面の笑みだった。リードされている展開だったが、まるでそのシチュエーションを楽しむようにピッチ上で躍動した。

　当初の復帰予定は選手権前だったが、驚異の回復力を見せてのベンチ入り、そして復帰戦。まだ慎重なプレーを選択するシーンもあったが、エースの存在感はやはり別格だった。

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