経歴を振り返っても分かるように、この半年で人生をガラリと変えたのは間違いない。だが、最後のスペイン戦では何もさせてもらえなかった。この事実から目を背けるべきではない。

　後半勝負の目論見を立てていた森山監督が、61分に高岡を送り込む。だが、３戦連発の大活躍により、相手DFから警戒された。もちろん、中２日の４連戦で消耗していたチームメイトから良いサポートを受けられなかった側面もあるが、ボールを呼び込めず前線で孤立した。パスを受けても囲まれては潰され、前線からプレスを掛けても外されるシーンが目立った。

　高岡自身も相手との差を感じており、特に局面の打開では、今までに味わったことがない圧を感じたという。

「１枚抜けても世界の戦いでは２枚、３枚で来る。それでもぶち抜かないと、世界ではやっていけない」

　閉塞感が漂う展開で流れを変えるためには、ひとりの力で打ち負かせないとチームを救えない。もちろん、それは大会前から課題として把握しており、チームでもトライしてきた。その結果がグループステージでの好パフォーマンスに繋がったが、一番大事な場面では通用せず、思うように貢献できなかった。

「ここにいる選手はデカくて、アグレッシブでボール回しも上手い。ビルドアップも凄くて。やれなくはないと思ったけど、こういうところで勝てないと、やれるという自信には...やれるとは言えないです」
 

　悔しさを滲ませたが、世界で戦った経験が財産になる。結局のところ、自分自身で味わってみないと分からない。

　何が通用して、何ができなかったのか。

　ゴール前への入り方や背後への抜け出し、前線からのプレスといった自身の武器を活かして、４ゴールという結果を残した。得点以外でも大柄な相手に立ち向かい、巧みなコース取りで倒されずにボールを前に運んだ。一方で大事な場面で結果を残せず、警戒されたなかで何ができるのかは今後の課題となる。

“時の人”になり、勘違いして数年後にトーンダウンしてしまう選手は少なくない。そうした事態に陥らぬよう、ここからが本当の勝負だ。

　まずは、目の前に迫っている年末年始の高校サッカー選手権でどんなプレーを見せるのか、だ。世界の舞台で得た学びを証明すべく、高岡は謙虚な気持ちを忘れずに次の一歩を踏み出す。

取材・文●松尾祐希（フリーライター）

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