斉藤に残留を決意させたモーリス・スタイン監督はアヤックスに引き抜かれて「何なんだよ」と思ったというが、アシスタントコーチから昇格したイエルン・ライスダイク監督が変わらぬ信頼と期待を寄せてくれている。もちろん将来的なステップアップも見据えるが、まずはスパルタの環境で、攻撃の中心として監督スタッフやチームメート、ファンサポーターに応えていかないといけない。

「全ての面で相手の脅威になるような存在にならなきゃいけない」

　ここから斉藤はパリ五輪予選を兼ねるアジアカップ予選を戦うため、バーレーンでU-22日本代表に合流する。代表活動で、欧州から中東に行っていきなり公式戦という状況は「初めてなので。どうなるか分からない」と話す。それでも「やっぱり観てる人はそんな環境なんてどうでもいいと思うので。こっちでやってるプレー以上にできるように準備していかないといけない」と言い訳にしない。
 

　斉藤は当初から大岩剛監督が掲げる“A代表経由パリ行き”の有力候補でもあるが、A代表はドイツ、トルコという欧州の強豪と対戦するとはいえ親善試合、一方のU-22代表はパリ五輪につながる公式戦だ。それでも筆者の質問に対して「予選がありながらもめちゃくちゃ活躍してれば（A代表に）呼ばれると思うので。そこは常に狙っていかないといけない」と回答した。

「パリ五輪のメンバーだからA代表に呼んでみるじゃなくて、ヨーロッパで活躍してるからA代表にちゃんと選ばれるような選手になりたいと思ってるので。オランダで結果を出すことはより大事だと思いますし、もっと上のリーグというと変ですけど、自分より全然活躍してる人たちばっかりなので。それ以上に活躍しないといけないので。頑張っていきたい」

　所属した時期は違うが、同じ横浜FCのよしみもある小川との”コウキ・ダービー”は刺激になったようだが、どんな試合でも結果を残せないことは悔しいと強調する。筆者としても貴重な現地取材の機会にゴールかアシストという仕事を目にしたかったが、ロッテルダムのスパルタというクラブで主力に定着している頼もしさ、そして現状に満足しない野心の両方を感じることができて、22歳のアタッカーの今後がさらに楽しみになった。

取材・文●河治良幸

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