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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十三「ジダン新監督のキーワード、“Actitud”の神髄とは?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年01月14日

マドリーを伝統の「剛直なクラブ」に戻すのに最適な人材か。

選手たちがベニテス前監督のやり方を受け入れず、一体感と活気に欠けていたマドリー。ジダンはチームを変えられるのか。(C)Getty Images

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 拙著『エル・クラシコ』では、マドリー選手時代のジダンにインタビューしたときのことを綴っている。 
 
――フットボーラーになっていなかったら、どんな職業に?
ふと、そんな質問を投げた。
「トラック運転手かな」
 ジダンはそう答えていたものである。
 
 長距離トラックを運転する彼は当然、無口だ。BGMはあるが、音量は聞こえるか聞こえないか程度に押さえられている。ドライブインでは寡黙にコーヒーをすする。紅茶よりもコーヒーの方が似つかわしい。安全運転で仕事を終えると、家族のいる自宅に戻る。奥さんの世間話や子供たちの愛嬌のある仕草に口元が綻ぶ程度の笑いを浮かべる。その余韻の中、一日を終える。
 
 トラック運転手ジダンの想像は、意外なほどしっくりとくる。
 
 責任を持って一つの仕事をやり遂げられるか――。その「Actitud」は、監督としてのジダンにとっても、キーワードになるだろう。
 
 前任者のラファエル・ベニテス監督時代、マドリーの選手たちはプレーに活気を失っていた。それは戦術に対して偏執的な指揮官に対する嫌悪に端を発していたが、マドリーの選手として一切の怠慢は許されない。
 
「紳士たれ」
 
 マドリーの選手は、その生き様をピッチで求められるのだ。
 
 後任のジダンは、どんな些細な怠慢も見逃さないだろう。それはハードワークというようなフィジカル的な献身のみを指すのではない。クラブのエンブレムに恥じぬ戦いをしているか、あるいはもっと言えば、フットボールを心から楽しんでいるか、その才能を余すところなくピッチで発揮できているか、ということだろう。
 
「大事なのは、君たちがフットボールを楽しむことだ」
 
 ロッカールームで選手たちにそう伝えたジダンは、マドリーを伝統の「剛直なクラブ」に戻すのに、最適の人材かもしれない。
 
 無論、監督としての経験に乏しく、不安がないわけではない。もし負けが混み始めれば、メディアの圧力は強くなるだろう。ストレスは半端ではない。それによって、ジダン監督が道を誤る可能性もある。
 
 しかし、デビュー戦において、ベンチの前に立つ彼のジダンが、凛々しく輝いていたことだけは事実である。
 
文:小宮良之
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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