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移籍市場を動かす「代理人/エージェント業界」の最新事情。アメリカ資本の進出でどう変わる?

カテゴリ:移籍情報

ジャンルカ・ディ・マルツィオ

2023年06月25日

進む移籍マーケットの劇場化

今年になって母国のエージェントから大手に乗り換えたホイルンド。こうした動きは一層加速していくだろう。 (C)Getty Images

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 たとえば、デンマークで大きな影響力を持ち、代表選手の多くを抱えている『ブティック・トランスファーズ』は、セリエAでブレイクした20歳の大型CFラスムス・ホイルンドを、コペンハーゲンからシュトゥルム・グラーツ、そしてアタランタへとステップアップさせてきた。しかし、ホイルンドの両親に雇用を提供するなどの条件を提示したCAAベースに引き抜かれている。
 
 小規模なエージェンシーは、選手がエージェントを変更する場合に違約金を求める自衛策を講じているが、たとえば100万ユーロ程度の違約金は大手にとっては、言い方は悪いが端金であり、ほとんど効力はない。
 
 こうした大手と結びついていない大物選手もいないわけではない。リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・エムバペ、アドリアン・ラビオ、ラファエウ・レオンらがそうで、彼らに共通しているのは、家族がエージェントを務めている点だ。
 
 家族の誰かにビジネスセンスがあり、有能な弁護士などの助言者に恵まれている場合は、特定のエージェンシーと契約することなく、選手をマネジメントすることが可能となる。この手法ならエージェンシーを仲介人として移籍交渉を任せ、それでいて主導権は常に自分たちが握れるのだ。
 
 アメリカ系エージェンシーの勢力拡大がもたらした影響として、移籍マーケットの劇場化が進んだことも挙げられる。以前、メンデスやライオラなどによる移籍オペレーションは、その前日まで何の気配も感じさせず、マスコミの注目を避けて水面下で進められることが多かった。
 
 それが今では、エージェントやクラブの一挙手一投足がメディアやSNSを通じて公にされるようになった。エージェント側がクラブと交渉のテーブルについている写真をアップするのも珍しくなく、積極的に露出して注目度を高めて優秀さをアピールし、新たな顧客の発掘につなげている。これはアメリカのスポーツエージェント、芸能エージェントの発想だ。

【PHOTO】2023年夏の移籍市場で新天地を求めた名手たちを一挙紹介!
 私たち移籍専門ジャーナリストがその後押しをしている側面もないわけではないが、構図としては、私たちがエージェンシーの露出に手を貸しているというよりも、エージェンシー側が私たちを利用して露出を拡大している側面が強い。実際、私たちが取材に赴くまでもなく、彼らのほうからホットな移籍情報を送ってくる。こうした大手エージェンシーは今夏の移籍マーケットでも話題の中心になるだろう。
 
 最後に国別の勢力地図をざっと見ていこう。イングランドで強いのは、CAAステラー、CAAベース、ワッサーマンのアメリカ資本系、そしてジェスティフト、ルーフなど国際化に成功した欧州の大型エージェンシーだ。
 
 ドイツはROOFとスポーツ360で、イタリアでは、パストレッロ、ルッチ、ミーノ・ライオラの従兄弟ヴィンチェンツォ・ライオラがONEから独立して設立した『チーム・ライオラ』(ズラタン・イブラヒモビッチら)、トゥーリオ・ティンティ(アレッサンドロ・バストーニら)などが影響力を持っている。そこにCAAステラーやCAAベース、ラマダーニのリアンなどが割り込んできている情勢だ。
 
 スペインは国際移籍がそれほど盛んでないこともあり、前述したユー・ファーストを除くと、国内市場に特化した中・小規模のエージェンシーが今なお主流だ。ただし、そこにもアメリカ資本の大手が入り込んできている。
 
文●ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳●片野道朗
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年6月15日号より転載
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