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移籍市場を動かす「代理人/エージェント業界」の最新事情。アメリカ資本の進出でどう変わる?

カテゴリ:移籍情報

ジャンルカ・ディ・マルツィオ

2023年06月25日

有力選手を巡る「仁義なき」引き抜き競争が激化

B・シウバやディアスを顧客に持つ大物代理人、ジョルジュ・メンデス(左)も、アメリカ資本参入の影響を少なからず受けている。(C)Getty Images

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 近年の代理人/エージェントの世界における最も大きな変化は、投資ファンドを含むアメリカ資本の進出によって、ビジネスそのものがアメリカナイズされてきたことだ。
 
 プレミアリーグの選手を最も抱えるエージェント会社トップ5のうち、3社はアメリカ資本。そのうちの2社(1位の『CAAステラー』と4位の『CAAベース』)は、アメリカの大手芸能エージェンシー『CAA』(クリエーティブ・アーティスツ・エージェンシー)によって買収され、近年になって傘下に入ったイギリスの会社だ。
 
 さらにもう1社(2位の『ワッサーマン』)も、NFLやMLB、NBAの選手エージェントを本業とするアメリカ企業で、過去にイギリスのエージェント会社『SFX』を買収して、欧州サッカーに進出した経緯がある。
 
 欧州におけるこれまでの代理人業は、ジョルジュ・メンデス、ミーノ・ライオラ、フェデリコ・パストレッロらが個人事務所の代表として、十数人から多くても30~40人ほどの契約や移籍にかかわる業務を代行し、選手のキャリアをサポートするビジネス形態だった。
 
 しかし、CAAステラー、CAAベース、ワッサーマンといったアメリカ系のエージェンシーは、規模そのものが代理人の個人事務所と比べると桁違いに大きく、抱える数百人の選手をあらゆる角度からサポートする企業体。選手とは純粋なビジネス関係で結ばれ、移籍交渉から契約までのスポーツ的/法務的な支援はもちろん、スポンサーやコミュニケーション(マスコミ対応やSNS活用)まで、あらゆる分野・領域を総合的にサポートしている。
 
 アメリカ系エージェンシーのもうひとつの特徴は、競合他社からの顧客の引き抜きを躊躇しないことだ。旧来の欧州の代理人は、選手と個人的な信頼関係で結ばれていることが多い。それゆえ、よほど大きな利害の対立でもない限り、選手が代理人を乗り換えることは珍しかった。
 
 一方のアメリカ系エージェンシーと選手との関係は純粋にビジネスライクなもの。競合他社がより良い条件や移籍の可能性を選手に提示して引き抜くケースは普通にあり、選手の両親や兄弟に雇用を提供して家族丸ごと引き入れようとする動きもしばしば目につくほどだ。

 実際に1~2年、時には数か月でエージェントを乗り換える選手も珍しくなくなってきた。これはエージェント間の「仁義なき」引き抜き競争が激化していることの表われだ。
 
 この引き抜き合いに、欧州の大物代理人たちも否応なく巻き込まれている。クラブがライバルチームに主力を引き抜かれるのを怖れるように、今ではエージェンシーも顧客を他社に引き抜かれるのを怖れる状況が生まれている。この現象は以前にはなかったものだ。
 
 アメリカ系に対抗する形で拡大志向を強め、生き残りを図ろうとしている欧州勢の大手は、メンデスの『ジェスティフト』(顧客はベルナルド・シウバ、ルベン・ディアスら)を筆頭に、ドイツで勢力を拡大している『スポーツ360』(トニ・クロース、ティモ・ヴェルナーら)と、『ROOF』(カイ・ハベルツ、セルジュ・ニャブリら)、ファリ・ラマダーニの『リアン・スポーツ』(レロイ・ザネ、フェデリコ・キエーザら)など。
 
 さらには、22年4月に急逝したライオラの『ONE』(アーリング・ハーランドら)を引き継いだラファエラ・ピメンタ、イタリアではパストレッロの『P&Pスポーツ・マネジメント』(アレックス・メレトら)、アレッサンドロ・ルッチの『ワールドサッカー・エージェンシー』(デヤン・クルセフスキら)、スペインの『ユー・ファースト』(ファビアン・ルイスら)も挙げられる。
 
 これらのエージェンシーは、それぞれの本社に加えて欧州や南米の主要国にブランチオフィスを開き、さらなる勢力拡大をめざして激しい競争を繰り広げている。ただ、こうした動きは競争に生き残った大手による選手マーケットの寡占化へと繋がっていく可能性がある。実際、その前段階として、大手には規模でもサービスの質でも太刀打ちできない小規模なエージェントは、年々困難に陥っているのだ。
 
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