セルティックでは左インサイドハーフで左FWの前田大然、最前線の古橋亨梧とトライアングルを形成し、数多くの決定機を演出していた。本人も「ペナルティエリア付近でのプレーだったり、守備のタスクもよくなっている」と自信をのぞかせていた。

　大学時代から慣れ親しんでいる三笘、上田とのトライアングルは所属クラブでプレーしている時のようにやりやすく、連係を合わせやすい。本人も良いイメージを抱きつつ攻撃に行けそうだ。

　ともに川崎で戦った守田、谷口が周囲を取り巻き、東京五輪で共闘している堂安や久保もいる。まさにこれ以上の環境はないのだ。「ここで全てを出し切れなかったら、代表定着が難しくなるかもしれない」というくらいの強い覚悟と決意を持って、旗手はエルサルバドル戦のピッチに立つべきなのだ。

　森保監督体制での彼を振り返ってみると、これまではFWやサイドハーフ、SBでも使われてきた。それだけの適応力と多彩さを認められているからこそのマルチ起用だったに違いない。だが、本人にしてみれば「便利屋」「器用貧乏」といったネガティブな感覚をどうしても抱いてしまうこともあったかもしれない。

　そこから抜け出すためにも、今回の左インサイドハーフやボランチで傑出したストロングを見せつけ、爪痕を残すことが肝要だ。
 

　エルサルバドル戦はまさに絶好の機会。13日の紅白戦でも左SBの森下がボールを持った瞬間、一気にゴール前まで駆け上がってフィニッシュに行こうとしていたが、そういったダイナミックさと無尽蔵の運動量を前面に押し出し、ゴールかアシストに絡むこと。それこそが旗手の大きな魅力と言えそうだ。

　そのうえで、今後も「多彩な役割を高いレベルでこなせる数少ない人材」という位置付けは念頭に置いてほしい。FW・MF・SBを幅広くこなせる万能性というのは素晴らしい武器。各ポジションのスペシャリストたちに匹敵するハイレベルのパフォーマンスを示せる人材がいれば、森保監督は必ず手元に置き続けるだろう。

　今季の旗手を見ると、そうなれる可能性があるし、日本代表のキーマンになれるだけの器も感じさせるのだ。

　カタールW杯落選の屈辱を糧に、一皮も二皮もむけた旗手怜央。それを今回の６月シリーズで色濃く印象付けることができれば、本人にとっても代表にとっても大きなプラスとなる。まずは左インサイドハーフ、ボランチでの一挙手一投足をしっかりと見極めたいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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