「クラブの価値観がぶれてはならない」
トーマス・ミュラーが試合後にミックスゾーンで語っていた。
「スタジアムに詰めかけたファンは、僕らがこの試合でどれだけエネルギーをかけて勇敢に戦ったかをわかってくれたと思うし、だから試合後ファンは僕らにあれだけのエールを送ってくれたと思う」
でも、だからといってすべてを水に流すつもりはない。ファンからのメッセージが続く。試合終了が近づいてきたころ、ゴール裏の横断幕が現れた。そこにはこう書かれていた。
「目標を達成できないことはある。だがクラブの価値観がぶれてはならない。政策を見つめ直せ」
本当にファンが誇れるチーム作りをしようとしているのか。クラブとして最高峰のタイトルを取るための取り組みをしているのか。「歴代最高の選手層」とCEOのオリバー・カーンは胸を張っていたが、果たして本当にそうなのか。
そのカーンはミックスゾーンで報道陣の前に立ち、真剣にその質問に答えていた。
「私は選手として14年間このクラブでプレーをしてきた。だからファンからのメッセージがどういうことかよくわかる。そのメッセージを、その批判を受け入れて、それでもこれを乗り切っていかなければならない」
CFがカメルーン代表マキシム・シュポ=モティングと17歳マティス・テルの二人しかいない陣容についての質問には次のように言葉を残している。
「自分たちは常に市場を観察しているし、いつでもいろんなことを熟考している。今日相手チームでプレーをしていたCF(ハーランド)を獲得しようとやれるだけのことをした。だが、ロベルト・レバンドフスキクラスの選手は世界にもそうはいない。そしてその選手が移籍をするとなったら膨大なお金が動く」
その通りだろう。世界最高峰のFWが去った後に代わりがそう簡単に見つかるはずもない。でもだからといってシュポ=モティング1人にこのポジションを託すのはやはり得策ではなかったし、「他のCFがいたら」と嘆くくらいなら、将来性抜群のテルをもっと起用して育つ機会を作ることも必要ではなかったのだろうか。
カーンは最後に「まずは残されたタイトルの可能性のあるリーグにすべてを注ぐ。シーズンが終わってから、落ち着いて、じっくりと考えていかなければと思っている」と話して、ゆっくりとミックスゾーンを後にした。
もしリーグも落とすようなことになったら、10-11シーズン以来となる無冠となる。果たしてドイツの絶対王者はタイトルと威厳を守れるだろうか。
取材・文●中野吉之伴
「スタジアムに詰めかけたファンは、僕らがこの試合でどれだけエネルギーをかけて勇敢に戦ったかをわかってくれたと思うし、だから試合後ファンは僕らにあれだけのエールを送ってくれたと思う」
でも、だからといってすべてを水に流すつもりはない。ファンからのメッセージが続く。試合終了が近づいてきたころ、ゴール裏の横断幕が現れた。そこにはこう書かれていた。
「目標を達成できないことはある。だがクラブの価値観がぶれてはならない。政策を見つめ直せ」
本当にファンが誇れるチーム作りをしようとしているのか。クラブとして最高峰のタイトルを取るための取り組みをしているのか。「歴代最高の選手層」とCEOのオリバー・カーンは胸を張っていたが、果たして本当にそうなのか。
そのカーンはミックスゾーンで報道陣の前に立ち、真剣にその質問に答えていた。
「私は選手として14年間このクラブでプレーをしてきた。だからファンからのメッセージがどういうことかよくわかる。そのメッセージを、その批判を受け入れて、それでもこれを乗り切っていかなければならない」
CFがカメルーン代表マキシム・シュポ=モティングと17歳マティス・テルの二人しかいない陣容についての質問には次のように言葉を残している。
「自分たちは常に市場を観察しているし、いつでもいろんなことを熟考している。今日相手チームでプレーをしていたCF(ハーランド)を獲得しようとやれるだけのことをした。だが、ロベルト・レバンドフスキクラスの選手は世界にもそうはいない。そしてその選手が移籍をするとなったら膨大なお金が動く」
その通りだろう。世界最高峰のFWが去った後に代わりがそう簡単に見つかるはずもない。でもだからといってシュポ=モティング1人にこのポジションを託すのはやはり得策ではなかったし、「他のCFがいたら」と嘆くくらいなら、将来性抜群のテルをもっと起用して育つ機会を作ることも必要ではなかったのだろうか。
カーンは最後に「まずは残されたタイトルの可能性のあるリーグにすべてを注ぐ。シーズンが終わってから、落ち着いて、じっくりと考えていかなければと思っている」と話して、ゆっくりとミックスゾーンを後にした。
もしリーグも落とすようなことになったら、10-11シーズン以来となる無冠となる。果たしてドイツの絶対王者はタイトルと威厳を守れるだろうか。
取材・文●中野吉之伴