ドイツに渡って１年。ドイツ語はまだそこまでできないというが、英語での意思疎通は問題ないという。吉田という高度な英語力を備えた先輩も近くにいるため、コミュニケーションをより密にして、プレー精度を上げていくことは十分可能なはずだ。

「新しく入った選手も多いし、どこでボールが欲しいとか、そういったことはもっと突き詰められる。止まっている暇はないし、どんどん考えてトライしていかないと、他の選手に先に行かれてしまう」と危機感を募らせる。

　こうして目の前の壁を全力で乗り越え、今季ここまで20試合で総得点14という苦境にあえぐシャルケ攻撃陣の救世主になってくれれば、上月はもう一段階、二段階とステップアップできるはず。わずか１年での２部逆戻りを阻止することが、22歳のアタッカーに課せられた最重要課題だ。

「今の自分は５部から１部に上がったことで注目してもらっていますけど、ピッチに立ったら土俵はみんなと同じなので。ここまでの過程はそんなに大事じゃなくて、結果を残さないと需要がなくなっちゃう。もっともっと結果を残せば、たぶん、そういう経歴のことには触れられなくなると思う。もっと違う話題に変えられるような結果を残したいです」
 

　上月自身は「シンデレラストーリーを地で行く男」から早く卒業したいと考えている。そのためにもゴールという結果が必要不可欠。すでにライプツィヒ戦で１点を奪い、爪痕は残しているが、ここから先には残留争いのライバルであるシュツットガルトやボーフムとの重要マッチが続く。そこでチームを救う大仕事ができれば、彼は「本物のエース」へと飛躍できるに違いない。

　そうなれば、森保監督もA代表に呼ばざるを得なくなるだろう。３月24・28日のウルグアイ・コロンビア２連戦に招集されるかどうかはまだ分からないが、上月が日の当たる舞台に立つ日はそう遠くなさそうだ。

　右サイドのスピードスター伊東純也（スタッド・ドゥ・ランス）と堂々とポジション争いを演じられるレベルに駆け上がるべく、這い上がった男にはこのチャンスを逃してほしくない。

取材・文●元川悦子（フリーライター）