• トップ
  • ニュース一覧
  • 「GKもやってのけた」「常に誠実で丁寧な物腰」“王様”ペレの凄さと素顔がわかるエピソード

「GKもやってのけた」「常に誠実で丁寧な物腰」“王様”ペレの凄さと素顔がわかるエピソード

カテゴリ:ワールド

リカルド・セティオン

2023年03月07日

最後の挨拶をするためにスクーターを飛ばして…

その偉大なる功績を偲び、ペレの死後、世界各国で追悼セレモニーが催された。(C)Getty Images

画像を見る

 ペレの試合を見せてくれたのは父だった。母はペレとのセレンディピティーをプレゼントしてくれた。
 
 ペレは私のことを気に入ってくれたのか、それとも7か国語が話せる語学力を便利に思っただけなのか、とにかくそれから機会があると通訳を頼まれるようになった。ペレは気遣いの人だった。彼からは本当に多くを教えられたが、最大のそれは謙虚さだ。一国の大統領に会うときも、一介のサポーターに接するときも、ペレはまったく変わらなかった。常に誠実で、相手を思いやり、丁寧な物腰だった。12歳で父を亡くした私はペレに父親を見ていたのかもしれない。
 
 ペレの訃報を知ったのは、彼が息を引き取って十数分後だった。ペレに近い人が連絡をくれたのだ。その瞬間、私の周りの世界は止まり、すべての感覚が麻痺した。覚悟はしていたつもりでも、受け止めきれるものではなかった。すぐに世界中の知り合いから連絡が入り、私はいくつものテレビ番組でコメントした。ただし、実感はないままだった。
 
 ペレに最後の挨拶をするために、サンパウロからスクーターを飛ばしてサントスに向かった。私の夢を叶え、それ以上を返してくれたペレ。どうしても直接、「オブリガード(ありがとう)」を伝えたかった。
 
 あれは日韓W杯だった。サポーターに囲まれて身動きが取れなくなっていたペレは、そこにちょうど通りかかった私を認めると大きな声でこう叫んだ。
 
「リカルド! リカルド!!」
 
 私は驚くと同時に感動に震えた。サッカーの王様が自分の名前を覚えてくれている。私の名前を呼んでいる! 
 
 その声は今もはっきりと耳に残っている。柔らかく伸びのあるあの声がもう二度と聞けないのかと、そう思うと寂しくてたまらない──。
 
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 
【著者プロフィール】
1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフーなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年2月2日号より転載
 
【関連記事】
「ペレがいなければジョーダン・ブランドは生まれていなかった」「国家を動かす力も持っていた」“サッカーの王様”は何が偉大だったのか
「対戦や一緒にプレーをしたことも」セルジオ越後が“憧れの人”ペレに追悼の意「彼の貢献は計り知れない」
「後継者と言われ笑っていた。ありえない」怪物ロナウドが逝去したペレを回想「彼こそが真のフェノーメノ」
「やっぱりすげーし、かっけーよ」FIFA公開の王様ペレW杯ゴール集にファン喝采!「本当に凄い方だったんだな」
ハーランド、ウーデゴー…なんとミトマ!元英代表DFが今季の“プレミア年間MVP候補”6人に三笘薫を選出!「毎週良いプレーをしている。彼ほど…」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ