【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の三十九「“教える”と“伝える”の差」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月08日

外来語をそのまま日本に持ち込んでも、言葉の本質は“潜って”しまう。

ハリルホジッチ監督は、決闘を意味する「デュエル」を多用。とはいえ、語感が伝わりにくい日本人にとっては、本来の意味が希薄になる危険性も。写真:サッカーダイジェスト

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 ひとつの言葉が正しく伝わっているのか、それを常に精査せざるを得ないだろう。
 
 例えば最近の日本サッカー界で頻出している「デュエル」という言葉がある。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が会見で多用。一般化を求めたことから、多くのメディアがその外来語をそのまま扱っている。
 
 1対1の戦いを指しているわけだが、デュエルと教えられた子どもたちはなにを感じ、思うのだろうか。言葉は進化すべきもので、新しいものを取り入れるのは悪ではないが、個人的には少し鼻白んでしまう。
 
 なぜなら、外来語をそのまま日本に持ち込んでも、言葉の本質は“潜って”しまうからだ。
 
 なぜ、デュエルを本来の意味である「決闘」、「果たし合い」として伝えないのだろうか? そこに不思議さと違和感を覚える。
 
 決闘であれば、それが単なる激しさだけでなく、ずる賢さだけでもない、戦いの極意だと伝わる。フランス語だけでなく、複数の言語、例えばスペイン語でもdueloという単語は存在するだけに、当事国の子どもたちであれば言葉を肌で理解することができるのだろう。
 
 果たし状を突きつける激しさ、あるいはその覚悟を連想するからこそ、言葉は生きるわけだ。
 
 しかし、日本ではそうはいかない。
 
「デュエルだ。1対1が大切だ!」
 
 指導者がそう口にした瞬間、言葉は硬直する。時間をかけることで、いつかは馴染むかもしれないが、本来の意味は希薄になっているだろう。サッカー先進国の情報を手に入れることは重要で、それを怠るべきではないのだが、それをどのように咀嚼すべきなのか――。
 
 伝える。
 
 その行為はサッカーにおいても簡単ではない。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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