【名古屋】自責の守護神・楢﨑正剛――成長を促し続けてきた“過剰すぎる”責任感

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2015年10月05日

600試合はあくまで通過点。貪欲さを失わず、先を見据える。

試合後、敵地に駆け付けたサポーターへ挨拶。メモリアルゲームを白星で飾れず「なかなかうまくいかなかった。残念」と肩を落とした。写真:田中研治

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 だから楢﨑にとって、600試合出場という偉業も単なる通過点に過ぎない。500試合出場達成の時に「大記録って……ああ、500日働いたってやつですか」と言い放った鉄人は、600試合の金字塔にも「キリが良い数字というだけ」と意に介していない。もちろん、その重みは理解している。だが現役である以上は自分を褒めるようなことはしない。「ずっと右肩上がりでいたい」。楢﨑は飄々としていてその実、とてつもなく貪欲な男なのだ。
 
 それはプレースタイルの変遷を見ても明らかだ。楢﨑と言えば安定感が代名詞のような選手だが、そのプレー自体にはこれまでに様々な肉付けがされてきた。かつて日本代表で定位置を争った生涯のライバル、川口能活とはよく“動の川口、静の楢﨑”と比較されてきたが、現在の楢﨑のプレーはどう見ても“静の”GKではない。プロ生活21年の間でサッカーのスタイルは大きく変わり、ルールさえ変わるなかで選手たちは新たなトレンドへの対応を求められてきた。楢﨑もまた、その中で守備範囲を広げ、足もとの技術を磨き、常に現代的なGK像へ近づこうとしてきた。
 
 そして39歳となった今もまだ、その欲は失われていない。西野監督は「サッカーに対し、追求する力がすごくある」と言い、名古屋のジェルソンGKコーチは厳しいトレーニングに食らいついてくるベテランを「普通じゃないね(笑)。今も成長を続けている」と感嘆交じりに表現する。それも本人からすれば「そういった時代の流れをうまく利用して、自分もうまくなってきただけ」で、なんら特別なことに感じていないのだが。
 
 肉体的な衰えは感じておらず、追求心は今なお人並み以上。まだまだ楢﨑の歩みは止まりそうにない。先の「キリの良い数字」発言には続きがあり、その言葉がすべてを表わしている。
 
「それ以外は、まだまだ続くと思って頑張ります」
 
 日本プロサッカー史上に残る偉大な記録は、まだしばらくの間は更新され続けることになりそうだ。
 
 
取材・文:今井雄一朗(スポーツライター)
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