選手を“見る”目の大切さ
「ここまでの短期間での急激な変化は僕も初めての体験かもしれません。もちろん今、風間さんの下でやっている技術の部分を伸ばしていけば、選手が変わるのは間違いありませんが、シンの突然“ボン”と振り切った変化はやはり驚きですね」
島岡監督を筆頭に周囲の目を釘付けにした木下の活躍。ただそれは裏を返せば、FWへのポジション変更がなければ、彼の才能を見逃していた可能性もあるということ。育成面での指導者の“目”がいかに大切かを改めて表わす事象とも言えるだろう。
その意味でもC大阪では、仕組み作りが重視され、クラブ全体で情報を共有し、選手の最適な未来を考えることが何より意識されている。風間氏も説明する。
「(島岡)健太もよく選手を見ているし、アカデミーの人材をトップに早く上げれば良いってものではない。彼らに目指してもらいたいのはお客さんを呼べるプレーヤー。いつも言っているけど、大事なのはいつ始めたではなく、どこまでいったかだから。
そういうことを踏まえて、(北野)颯太は年齢ではなく、トップにいたほうが伸びると判断したし、他の2種登録選手もそう。よりレベルの高い試合で学んでもらいたいと。それはクラブみんなで考えた結論であって、これはセレッソとして新しい取り組みで、楽しみな部分。シンのブラジルへの留学も彼が自分の力で掴み取ったものであるし、僕らが話し合ってシンのためになるからこそ送り出そうと決めた。
彼らはそれこそトップチームを飛び越えていっても良い。そのためにもトップからスクールまで関わる全員で、選手一人ひとりの将来を真剣に考え、共有して接する。そうした土壌作りを今後のクラブの発展につなげていきたい」
島岡監督を筆頭に周囲の目を釘付けにした木下の活躍。ただそれは裏を返せば、FWへのポジション変更がなければ、彼の才能を見逃していた可能性もあるということ。育成面での指導者の“目”がいかに大切かを改めて表わす事象とも言えるだろう。
その意味でもC大阪では、仕組み作りが重視され、クラブ全体で情報を共有し、選手の最適な未来を考えることが何より意識されている。風間氏も説明する。
「(島岡)健太もよく選手を見ているし、アカデミーの人材をトップに早く上げれば良いってものではない。彼らに目指してもらいたいのはお客さんを呼べるプレーヤー。いつも言っているけど、大事なのはいつ始めたではなく、どこまでいったかだから。
そういうことを踏まえて、(北野)颯太は年齢ではなく、トップにいたほうが伸びると判断したし、他の2種登録選手もそう。よりレベルの高い試合で学んでもらいたいと。それはクラブみんなで考えた結論であって、これはセレッソとして新しい取り組みで、楽しみな部分。シンのブラジルへの留学も彼が自分の力で掴み取ったものであるし、僕らが話し合ってシンのためになるからこそ送り出そうと決めた。
彼らはそれこそトップチームを飛び越えていっても良い。そのためにもトップからスクールまで関わる全員で、選手一人ひとりの将来を真剣に考え、共有して接する。そうした土壌作りを今後のクラブの発展につなげていきたい」
C大阪U-18は7月下旬から群馬で行なわれている日本クラブユース選手権に出場しており(7月30日時点でベスト4へ進出)、そのグループステージの2試合を終えた時点で、木下はブラジル留学のためにチームを離れた。傍から見れば、欠かせない得点源を大事な大会の最中に失うのはもったないように映る。それでも島岡監督は笑顔で木下を送り出した。
「クラブユース選手権もあるけど、いやいや早く行ってこいと。アカデミーにいる選手たちは誰もがプロの予備軍。すべては彼らの将来を考えてあげることが第一優先ですからね」
当の本人は「僕ら大人が横にいた影響もあったかもしれない(笑)」(島岡監督)が、チームを離れる前に全員に向けて「アピールして日本には帰ってこないくらいの気持ちで頑張ってきます」と所信表明した。
未成年であるため、強化部の人間がひとり付き添うが、「急に色々なことが変わって、言われた時は僕もそうですし、両親も本当に驚いていました。でも嬉しかったです」(木下)という地球の裏側・ブラジルでの挑戦は、思いもよらない壁が待ち受けているかもしれない。それでも「ドリブルも学べそうで楽しみ」と話す現地での体験が、彼の血となり、肉となり、今後の成長に結びつくはずだ。何よりその勇気ある決断が明るいものになることを切に願いたく、それこそ本人の言葉通り、日本に戻らず世界での挑戦につながれば非常に面白い。
そして選手の育成を第一に前へ進むセレッソアカデミーの改革もまだ序の口だ。「チャレンジを楽しみたいですし、まだまだ。チームとしてチャンスを作れている分、もっと点を取らないと」と笑みを浮かべる島岡監督は、選手たちにこう呼びかけているという。
「名古屋の時に風間さんと一緒にやらせていただいた際(トップチームで監督とコーチの関係性だった)風間さんがJリーグで5-0で勝つ目標を口にしていましたが、今年、(U-18は)7-0で勝てたゲームがありました(東福岡高戦)。すると風間さんは『今度はふた桁だな』と。
僕も『確かに』と思いましたし、だから5-0といのは90分じゃないと。45分で5-0を目指そうと新たに選手たちに伝えました。余計なものをどんどん省き、とにかく点を取ることをみんなが考える。技術を大切に、常にゴールに向かう。そうすればもっと変われるはずです」
チーム、そして木下ら有望なタレントたちの未来は、私たちが想像できないレベルにあるのかもしれない。もちろん木下の目標も「予想もつかないプレーができる選手」だ。もっともそれが風間氏や島岡監督たちが見据える新たな世界なのだろう。だからこそ彼らの一連の取り組みには、まだまだ驚かされそうだ。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
「クラブユース選手権もあるけど、いやいや早く行ってこいと。アカデミーにいる選手たちは誰もがプロの予備軍。すべては彼らの将来を考えてあげることが第一優先ですからね」
当の本人は「僕ら大人が横にいた影響もあったかもしれない(笑)」(島岡監督)が、チームを離れる前に全員に向けて「アピールして日本には帰ってこないくらいの気持ちで頑張ってきます」と所信表明した。
未成年であるため、強化部の人間がひとり付き添うが、「急に色々なことが変わって、言われた時は僕もそうですし、両親も本当に驚いていました。でも嬉しかったです」(木下)という地球の裏側・ブラジルでの挑戦は、思いもよらない壁が待ち受けているかもしれない。それでも「ドリブルも学べそうで楽しみ」と話す現地での体験が、彼の血となり、肉となり、今後の成長に結びつくはずだ。何よりその勇気ある決断が明るいものになることを切に願いたく、それこそ本人の言葉通り、日本に戻らず世界での挑戦につながれば非常に面白い。
そして選手の育成を第一に前へ進むセレッソアカデミーの改革もまだ序の口だ。「チャレンジを楽しみたいですし、まだまだ。チームとしてチャンスを作れている分、もっと点を取らないと」と笑みを浮かべる島岡監督は、選手たちにこう呼びかけているという。
「名古屋の時に風間さんと一緒にやらせていただいた際(トップチームで監督とコーチの関係性だった)風間さんがJリーグで5-0で勝つ目標を口にしていましたが、今年、(U-18は)7-0で勝てたゲームがありました(東福岡高戦)。すると風間さんは『今度はふた桁だな』と。
僕も『確かに』と思いましたし、だから5-0といのは90分じゃないと。45分で5-0を目指そうと新たに選手たちに伝えました。余計なものをどんどん省き、とにかく点を取ることをみんなが考える。技術を大切に、常にゴールに向かう。そうすればもっと変われるはずです」
チーム、そして木下ら有望なタレントたちの未来は、私たちが想像できないレベルにあるのかもしれない。もちろん木下の目標も「予想もつかないプレーができる選手」だ。もっともそれが風間氏や島岡監督たちが見据える新たな世界なのだろう。だからこそ彼らの一連の取り組みには、まだまだ驚かされそうだ。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)