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“風間改革”進行中のC大阪アカデミーが示す興味深い取り組み。ゴール量産のストライカー・木下慎之輔が掴んだブラジル留学の意味

カテゴリ:高校・ユース・その他

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年07月30日

ゴールを奪えるようになったキッカケは?

ブラジル留学が決まったC大阪U-18の木下慎之輔。ゴールを量産し、自らチャンスを掴んだ。(C)SOCCER DIGEST

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 今年の春先頃だろうか。こんな声を聞く機会が増えたように感じる。

「今、セレッソアカデミーが面白い」

 風向きが大きく変わったのは言わずもがな、2020年末、風間八宏氏がアカデミー技術委員長に就任したことだ。そこから約1年半、C大阪は急速な変化を見せている。

 U-18の試合結果を見てもゴール数は格段に増え、内容はまさに“らしさ”全開。かつて風間氏が指揮した川崎や名古屋のように、技術力を生かした魅力的なサッカーを育成カテゴリーでも展開しているのである。

 タレントもすくすく育っている。今季、MF岡澤昂星がトップ昇格を果たせば、今年2月にはFW北野颯太が17歳でプロ契約を交わし、ルヴァンカップでは南野拓実を抜くクラブ最年少記録(17歳6か月17日)でゴールをマーク。さらにDF川合陽、MF石渡ネルソン、GK春名竜聖もトップの試合に出場できる2種登録選手となった。

 その流れのなか、新たな才能も輝き出している。U-18に所属する高校3年生の木下慎之輔(きのした/しんのすけ)。U-18プレミアリーグWESTで得点ランキングトップ(11ゴール)に立つ身長175センチ・76キロのFWは、スピード豊かで、動き出しの質も高い。5月27日にはこちらも2種登録選手となった。

 そして直近の活躍を評価されるように、今回、木下はヤンマーとブラジル1部のチーム「レッドブル・ブラガンチーノ」がパートナー契約を結んだことで、1か月のブラジル留学の権利を勝ち取ったのである。
 木下の成長曲線は非常に興味深い。前述したように、プレミアリーグWESTでは同世代のライバルたちを抑えて得点を量産しているが、点を取れ始めたのはこの数か月のことだという。その裏側には運命を変えるポジション変更があった。

 木下が元々、担っていたのはサイドハーフ。スピードに特長があり、「メッシが好き」と本人が語るように、ドリブルワークに自らの生きる道を切り開こうとしていた。しかし、なかなか結果につながらない。潜在能力は確かだが、どう伸ばすべきか。

 風間氏、U-18チームを率いる島岡健太監督は思案した。キッカケは今春の関東遠征。島岡監督が振り返る。

「僕もある意味、驚きやったんですよ。彼は元々サイドハーフでプレーしていた。ただ今年の春先の関東遠征に風間さんが来てくださって、同級生の末谷(誓梧)という選手がいるんですが『ちょっと(シン〈木下〉)とポジションを入れ替えてみたらどう?』と、アドバイスをいただいたんです。そこで実際に試してみたら、シンは水を得た魚のように躍動し始めた。

 関東遠征ではAチーム、Bチームと、あえて分けていた部分があって、シンは最初はBでプレーしていました。でもFWとして急に点を取り出して、『こんなに点を取れるやつはおらん』とAのほうでもFWとして起用した。そこからですよ、皆さんがご覧になった活躍ぶりは」

 彼の元々の特長や課題は島岡監督も理解していた。

「去年からどこか苦しんでいた部分はあったと思います。ボールを触るのは本当に大好きな子なんです。でもなんだか上手くいかない。自分がボールを持ってから何かしようとしていたことが多かったですが、一番前のポジションで出たことで点を取るプレーをまず考えたと思うんです。頭が切り替わったというか、整理されたというか、そこに出会っちゃったというか」

 風間氏の教えでは“止める・蹴る・運ぶ・受ける・外す”というキーワードがよく使われる。そこで意識されるのは“どんな状態でもゴール前でフリーになって点を取る”ことだが、FW起用を境に、木下の中で眠っていた感覚と、これまでの積み重ねが結びついたのかもしれない。

 本人は自らの考えを頭のなかで一度咀嚼し、言葉を紡ぐ。人からは“納得しないと動かないタイプ”と言われるという。だから一見、口数は少ないように映る。ただ、それは無暗やたらに口を開くのではなく、意志が強いからこそ。ゴールを奪えている背景を訊けば、この時も頭を整理しながらゆっくりと答えてくれた。

「中学の時はFWをやっていたので、ポジションの変更に関しては違和感なくやれました。ゴールを奪えている背景……、うーん、考え方はだいぶ変わったとは思います。受け方やタイミングなど、今までとは大きく異なっていて。

 そうですね……よく言われるんですが、相手が動き出した時の一歩、相手の初めの一歩を見て、そのタイミングで抜け出すという感覚ですかね。(プレミアリーグWESTで2試合連続ハットトリックをした時は)決められる気しかしなかったと言いますか、ボールを出してくれたら決められる自信はありました。FWになって急にスイッチが入った感覚でもあります」

 非常に興味深い回答だ。敵陣、特に相手ゴール前など選手が入り乱れているエリアで、相手を見据えつつ、その選手が一歩、重心移動した瞬間にスッと動く。理屈は分かるが、なかなか難しい一連のプレーを木下は「1回、2回ではなく何回も繰り返せる」(島岡監督)。風間氏もよく説く“外す技術”は、改めてアカデミーで培ってきた教えと、自らの感性を結び合わせたからこそ表現できているのかもしれない。

「真ん中だと周りに人かいて、どの選手の裏を取れば良いかなと探し始めているはず。一方、サイドだと対面の相手が明確になりやすい分、自分がいつもロックオンされている感覚のはず。だからスピード勝負になる傾向が強い。でも今は最前線で、“よーいドン”で、スピード勝負を仕掛けなくても良い。その意味でシンの速さがより生きている。自分の目にはそう映る」

 風間氏も目を細める。

「シンは本当に納得しないと全然動かない。でも今の動きがしっくりきたんだろうなと。例えば相手がパッと動いた時に『この逆や』とか、それが見え出したんだろうな」と島岡監督も語る。
 
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