生前、小嶺先生は「生涯チャレンジ」をモットーにどんな時もグラウンドに立ち続け、子どもたちのために全力を尽くしてきた。そうした想いは両指揮官にも伝わっている。

　この試合でも子どもたちを勝利に導くべく、懸命に指揮を執った。テクニカルエリアの最前線に立ち、声を枯らしながら選手に言葉をかけ続ける。時折、厳しい言葉を送るが、全ては選手のため。そうしたスタンスは小嶺先生から受け継がれたものなのだろう。

　試合後、定方監督と山田監督に話を聞くと、ともに恩師への想いを口にした。
 

「小嶺先生に感謝をしています。（全国大会の１回戦で）大先輩である山田先生と戦わせてもらい、先生がそういうふうにしてくれたのかなと。本当に先生が導いてくれたと思います。しかも、決勝の舞台になる会場で戦わせてくれましたし」（定方）

「亡くなられて、今回もバスを運転しながらいろいろ考えていました。今日の試合会場はそうでもないんですけど、ヴォルティスの練習場から下っていく道が国見高校から見る風景と全く同じなんです。坂から降りていくと海があって、これは国見だよなと。こういう国見高校でこんな感じの風景を見ながら、何十年も頑張ってこられた。本当に凄いなって運転しながら思いました」（山田監督）

　結果は前橋育英に軍配が上がったが、小嶺先生の遺志を継ぐ者たちの挑戦に終わりはない。２回戦に勝ち上がった前橋育英の山田監督も気を引き締め直し、「（先生の想いを継いで）頑張る１年にしたいなって思っているから」と顔を上げた。小嶺先生が残したサッカーへの情熱はこれからも後進に受け継がれていく。

取材・文●松尾祐希（フリーライター）

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