香港戦で特に印象的なプレーをしていたのは、32歳で初めて代表入りして、さっそくスタメンを飾った水沼。僕が現役時代、父親の貴史が子どもたちをピッチに連れてきたりしていたから、小さい頃から知っているんだけど、やっぱり彼の右足のキック精度は親譲りだね。

　彼の父親もそうだったけど、サイドに張って寄せてくる相手との距離が少しでもあったらクロスを上げられるし、相手をドリブルで抜いて敵陣深くに進入しなくても、正確なアーリークロスで決定機を作れる。今の日本代表にはいないタイプだ。

　クロスが正確だから、ゴール前の選手に相手のマークを外す動きだけ考えていればいいという安心感を与えてくれる。今後、彼が代表に定着していくのは難しいかもしれない。でもデビュー戦で、自分がやるべきことをしっかりやり遂げられるのは凄いことだよ。
 

　あと個人的に嬉しかったのは、宮市が日本代表のピッチに約10年ぶりに立ったこと。アルベルト・ザッケローニ監督が日本代表を率いていた2012年に宮市が初招集されたとき、試合の解説を僕がしていた。そのときに19歳でのA代表最年少得点記録更新が懸かっていたこともあって、「宮市を出せ！」って言っていたのを思い出した。

　あれから10年。これまで大きな怪我をしたり、苦労の連続だったと思う。それを乗り越えて、マリノスでチャンスを掴んで、活かして、代表に帰ってきた。今回のプレーは全然ダメだったかもしれない。でも、よくぞここまで戻ってきたと称えたいし、今後も応援したい選手のひとりだ。

　日本はひとまず好スタートを切れたとは思うけど、香港と中国に勝つのは当たり前で、本番は第３戦の韓国戦。そこに照準を合わせて、３連勝でなんとしてでもタイトルを獲ってほしい。

【著者プロフィール】
金田喜稔（かねだ・のぶとし）／1958年２月16日生まれ、64歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車（現・横浜）でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。

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