ただ、大迫勇也（神戸）という絶対的１トップがいない分、３ボランチと３トップのままではゴール前の迫力を欠く可能性も皆無とは言えない。大迫の代役は上田綺世（鹿島）が有力視されているが、彼は最前線でタメを作ることに長けたタイプではない。

　となれば、伊東純也（ヘンク）と南野の両サイドが前線に出ていく回数が減るかもしれない。田中や守田が主導権を握りながら敵陣深く侵入する形を何度も作れれば理想的だが、勝利が必須のオーストラリアもそう簡単にはやらせないだろう。

　４－３－３で膠着状態に陥ったまま、前半45分間が終わるような状況になれば、昨年11月のオマーン戦同様、４－２－３－１へのスイッチも大いにあり得る。後半からボランチ１枚を下げ、トップ下に南野か久保建英（マジョルカ）らを配置し、左に三笘薫（ユニオンSG）を投入し、一気に勝負をかけるパターンは十分想定できる。

　そこで２ボランチを遠藤・田中にするのか、遠藤・守田にするのかは判断が分かれるところ。彼らのパフォーマンスを見ながら、指揮官は最終的に決断を下すはずだ。

　いずれにせよ、現時点では遠藤、守田、田中の３人がボランチの序列で上なのは間違いない。彼らは所属クラブでもコンスタントな働きを見せていて、取り立てて大きな穴が見当たらない。そこも森保監督の信頼に足る部分なのである。

　一方で、10月のサウジアラビア戦まで遠藤と鉄板ボランチを形成していた柴崎岳（ネガネス）は、前回シリーズでは出番なしと苦しい立場に追い込まれつつある。CBを主戦場とする谷口彰悟（川崎）や板倉、左SBでレギュラーを取りそうな中山雄太（ズウォーレ）、攻撃的万能型の原口元気（ウニオン・ベルリン）もボランチをこなせることを踏まえると、複数ポジションで計算しづらい柴崎のようなタイプはカタールW杯本番に向けて、より一層厳しくなるのかもしれない。
 

　ただ、遠藤・守田・田中の鉄板化によって、本当にW杯本大会でベスト８入りが果たせるかというのは、まだまだ未知数と言わざるを得ない。中盤の構成力や守備の強度はアドバンテージだが、どうしてもゴールへの迫力というのは低下する。今後も４－３－３をベースにするのであれば、インサイドハーフに久保や原口、旗手怜央（セルティック）のようなフィニッシュに長けた人材も起用できるような状況を考えていくべきだ。

　さしあたって、今回のオーストラリア戦は勝利が最優先。先々のことはあまり考える必要はない。現時点で最も計算できるボランチトリオが敵を凌駕し、主導権を握り、最終的に勝利の原動力になれれば、まったく問題はないのだ。

「ベスト８というのは、今の日本にとって現実的な目標」と遠藤も神妙な面持ちで語っていた。それだけの底力が日本に備わっていることを、彼らボランチ３枚には今回の大一番で率先して示してほしいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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