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「爆発音で目が覚め、チームとは音信不通」ウクライナに取り残されたブラジル人選手に母国記者が直接取材。涙ながらに訴えた過酷な現状「誰を頼ればいいのか…」

カテゴリ:ワールド

リカルド・セティオン

2022年02月26日

「完全に置き去りにされた」

シャフタールのイスラエル代表ソロモンは自力でウクライナを脱出したという。(C)Getty Images

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 そのほかにも各都市に滞在する選手たちが、皆集まってそれぞれ助けを求めている。私はキエフに次ぐウクライナ第二の都市ハルキウにあるメタリスト1925に所属する3人の選手レデク、ファビーニョ、マリルソンにZoomで話をすることができた。ハルキウはウクライナ北東部にあり、ロシア国境にとても近い。

「『大丈夫だ』というクラブの言うことを信じた俺たちがバカだった」と彼らは憤りを隠さず言う。

「一昨日、爆発の音で目が覚めてからはチームとは音信不通、完全に置き去りにされた。俺たちはロシア語がわからない。今どんな状況かもわからない。もう誰に頼ったらいいかもわからない」

 車はあるがガソリンはなく、町から出るのもまた怖い。店もほとんど閉まっていて、いつ食料がなくなるのかもわからない。手持ちの現金も少なく、カードは使えないところが多い。今はまだネットが通じているがそれもいつ遮断されるかわからず、そうしたら本当に孤立してしまうと、彼らは恐怖におびえていた。

 最後には、泣きながら「もしこの紛争が終わっても、ウクライナには絶対に残らない。こんなチームとは完全に縁を切る」と語気を強めていた。
 
 もっと悲惨なのは2部のヴォルチャンスクに所属する5人の選手だ。20歳前後で、ほんの2週間前にウクライナに移籍してきたばかりだが、右も左も分からないうちに、チームに見捨てられた。彼らのいる町もロシア国境に近く、すでにロシア軍の攻撃が始まっている。クラブの借りたアパートの一室に集まっているが、近くで爆発の音が聞こえるたびに怯える毎日だという。

「まさに悪夢だ。来たばかりで右も左もわからないし、言葉もわからない。怖いから夜も交代で起きていて、何かあったらすぐに対応できるようにしているんだ」

 ウクライナからSOSの声は届くものの、選手たちを助ける方策は見当たらない。

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
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