大きな疑問として残った伊藤洋輝の未招集
またこれまで工夫が見られなかったセットプレーでも揺さぶりをかけ、CKからグラウンダーのボールを受けた南野拓実がフリーで狙ったり、ニアでは谷口彰悟が合わせたりするなどゴールの可能性を感じさせるチャンスを創出したし、開始早々には中国DFが集中力を切らせた隙を突き、酒井宏樹のスローインから伊東純也が右サイドを突き破っている。
試合後の森保一監督は「今回だけではなく、ピッチ上でもミーティングでも毎回準備はしてきた」と強調していたが、あくまで表現できて結果に繋げるのがプロの仕事で、そのための努力は大前提になる。
試合後の森保一監督は「今回だけではなく、ピッチ上でもミーティングでも毎回準備はしてきた」と強調していたが、あくまで表現できて結果に繋げるのがプロの仕事で、そのための努力は大前提になる。
そういう意味では、逆に後半右利きの長友佑都に代えて送り出した左利きの中山雄太が早速ピンポイントクロスで2点目を演出したのは、采配の妙と捉えること出来る。ただし反面終始劣勢の中国も2本のシュートは決定機に近い。3点以上をたたみかけられず、停滞を招き酷く運が悪ければ勝点1に止まるリスクもあった。ボール奪取から攻撃の起点としてMF3人が出色のプレーを続けたのに比べると、仕上げに絡む伊東以外のFW陣の精度は物足りない。何より滅多にない地上波放送で心躍る内容を届けられたかは疑問だ。
今回幸運だったのは吉田麻也、冨安健洋が揃って故障という不測の事態で、先に中国戦を消化出来たことだった。板倉滉と谷口は厳しい状況で試されることはなく、もともとビルドアップの起点としてなら十分に計算は出来た。
一方で大きな疑問として残るのは伊藤洋輝の未招集である。長身レフティと貴重な存在で左SBの候補として浮上しても不思議はない。本大会を睨んでも早いタイミングで組み込んでいくべきタレントで、本来今回は試してみる格好のチャンスだった。目先の一戦に集中するのも判るが、旬な選手を適宜取り込める幅を用意しておくのも指揮官の重要な才覚だと思う。
取材・文●加部 究(スポーツライター)