中国代表新監督として火中の栗を拾う役割を担うことになったリー・シャオペンの言葉が端的に試合を総括していた。

「運が良ければ、もう少しチャンスを作れたかもしれないが、逆に日本がもっと差を広げていた可能性もあった」
 

　両国の格差は大きく、９割方ピッチ上の主人公としてプレーしていたのは日本だった。ワールドカップへの茨の道を切り拓くには勝つしかない中国は、序盤こそ攻撃を仕掛ける姿勢を見せかけたが、日本のミドルゾーンでの圧力に屈し、あとは苦し紛れのロングフィードしか策がなくなる。その後は極力速いリトリートでゴール前を固めるばかりになり、大迫勇也のＰKで奪われた１点に止める時間帯を引き延ばして後半に勝負を賭けることになった。前半の中国は、シュート、CK、クロス、ペナルティエリアへの侵入が1度もなく、まるで攻撃の痕跡を残せていない。結局ゴール裏の一角に陣取った数少ない中国サポーターは、コロナ禍のため卓球等でお馴染みの「加油（ジャーヨウ）！」の声を発することも出来ず、日本陣内にボールが飛んだり、DFのアクロバティックなインターセプト、あるいは頼みの綱のアランがウォームアップに出て来る姿に、歓びを見出すしかなかった。

　一方選手たちのコンディションにばらつきがあり、揃ってトレーニングを積む機会が限られた日本陣営だが、スタッフには十分な時間がある。さすがに中国の守備の弱点を炙り出し、セットプレーも含めた攻略ポイントはだいぶ整理して臨んだ様子だ。中国は大迫の背後に密着するチュー・チェンチェのようにマンマークを得意とする潰し屋はいても、ライン間、選手間でボールを受けられると途端に責任の所在が曖昧になる。3～４人で囲んでいても互いに静観して誰も寄せて行こうともしないので、日本の選手たちは包囲網の中で余裕を持ってキープしスルーパスも出せた。例えばサイドの縦関係の２人だけで難しければ、隣のレーンで3人目がサポートに入れば、容易に裏のスペースを攻略することが可能だった。

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