欧州有力国がより優位な状況に!? W杯、異例の11月開幕は大会にどんな影響を及ぼすのか?

カテゴリ:国際大会

加部 究

2021年12月28日

代表のチーム作りは21~22シーズン前に決着がついてしまう

 むしろ明暗を分けそうなのが、チームとしての準備期間と選手たちの休養時間の短さである。従来のように欧州のシーズン終了後の開催なら、開幕まで1か月間近いインターバルがあるので、束の間の休養を含めて1~2週間程度の準備期間を確保できた。だが今回は冬の開催なので、プレミアリーグを例に採れば、中断から約1週間で開幕を迎えることになり、欧州各国のリーグは大同小異だろう。
 
 要するに代表のチーム作りについては、21~22年シーズン開幕前に決着がついてしまう。結局それまでの成熟度がモノを言うわけで、必然的に最近質の高い試合を繰り返して来た欧州の有力国の優位性は一層強調されることになりそうだ。

 ただし同時に重要なカギを握るのが、中心選手たちのコンディショニングである。過去にも露骨に明暗が分かれたのが2002年日韓大会だった。ワールドカップ開幕前のシーズンで圧倒的な存在感を見せつけたのは、レアル・マドリーを欧州王座に導いたジネディン・ジダンだった。そのジダンを攻撃の軸に据えたフランスは、ワールドカップとEUROを続けて制し、本来なら最高潮の時期を迎えるはずだった。ところがチャンピオンズ・リーグ決勝まで戦い抜いたジダンは、疲労を引きずったまま代表に合流し韓国との親善試合で故障。ワールドカップ本大会では辛うじて3戦目にピッチに立つが、太腿のテーピングが痛々しく、フランスはまさかのGL敗退を喫した。逆に日韓大会で母国ブラジルの5度目の優勝と得点王に輝くロナウドは、ほぼ2年間近いブランクを経て直前のシーズン終盤に復帰。フレッシュな状態でワールドカップに臨めたことが幸いした。

 欧州シーズンでは、強豪クラブほど過密日程を避けられない。だがあまりに好調なシーズンインを果たせた選手たちが飛ばし過ぎると、ワールドカップへ向けて落とし穴が待っているかもしれない。もっともそれ以上に懸念されるのが大舞台を経た後のシーズン後半戦で、トッププレーヤーたちの過度な疲弊は今後議論のテーマになるに違いない。

 もしこれが20世紀末あたりまでなら、ワールドカップで発掘された選手たちが、冬の移籍市場を賑わす事態は容易に想像が出来た。1998年フランス大会に初出場した中田英寿がセリエAに進出したようなケースだ。だがもはやJ2の磐田でプレーする伊藤洋輝を、ブンデスリーガ1部のシュツッツガルトが獲得していく時代である。カタールで輝いた選手が価値を高めることはあっても、そこで初めてショーウィンドウに乗るということは考え難い。

文●加部 究(スポーツライター)
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