またメッシの安定したパフォーマンスには、プレーの変化も見逃せない。
 
　かつてのメッシは、最前線で果敢に敵の懐に飛び込んでいく激しいプレーを得意としていた。
 
　だがキャリアを積んでアルゼンチン代表では主将となったいまは、２列目から全体を見渡し、的確にパスをさばいて仲間を使うプレーが増えた。闇雲には勝負せず、勝負どころで大胆に仕掛けていく。コパでは１ゴールしか決めていないが、これはアンヘル・ディ・マリアやセルヒオ・アグエロに華を持たせているからだ。
 
　鉄砲玉だった若手時代から、手下を巧みに操る老獪なベテランへ――。
 
　それが増え続けるゲームへの、メッシなりの対応策。これは賢くなければできないことだ。
 
　もうすぐ、メッシの長いシーズンが終わりを告げる。
 
　サンティアゴでの強敵チリとの決闘に、メッシは悲願のA代表初タイトルを賭ける。
 
　その先には、ようやくオフが待っている。だが、これも長いものではない。すぐに始まるシーズンは、またしてもメッシを休ませてくれないだろう。
 
　日本でのクラブワールドカップ（12月10日から）、そして早くも次のコパ・アメリカが控えているからだ。財政難の南米サッカー連盟は「大会百周年」にかこつけて、来年の夏、アメリカでのコパ・アメリカ開催（16年６月３日～26日）を決めた。
 
　いったい、メッシはどれだけ働けばいいのだろう。
 
現地取材・文：熊崎敬