【コパ・アメリカ2015】
グループC
○ブラジル ２-１ ●ペルー
［得点者］ブ＝ネイマール（５分）、D・コスタ（90分＋）：ペ＝クエバ（３分）
 
　格下ペルーを振り切り、幸先よく勝点３を獲得。ブラジルが２大会ぶり９回目の優勝に向けて好発進した。
 
　悪夢に終わったワールドカップ後、新監督にドゥンガが就任。新体制となってから10戦全勝でコパ・アメリカを迎えた彼らは、この勝利で連勝を11に伸ばした。
 
　もっともブラジルは無敵艦隊ではない。この試合も目を覆うようなシーンで幕を開けた。
　３分、ペルーのFKにゴール前が混乱し、GKジェフェルソンが目の前の敵にパスを渡してしまう。これをクエバに叩き込まれ、早々とビハインドを負った。
 
　だが、これでブラジルは目を覚ました。
　２分後、喜びに浸るペルーにネイマールが同点ゴールを叩き込む。２列目から走り込み、D・アウベスからのクロスを頭で合わせた。マークがいない、練習のようなシュートだった。
 
　エースのゴールでブラジルは活気づくかと思われた。だが、彼らの思い通りにはならなかった。ブラジルはパスをつないでペルーを包囲するように攻め立てたが、多くのチャンスを生み出すことはできなかった。
 
　２列目のネイマール、ウィリアン、フレッジが時折、手品のようなテクニックを見せ、観衆を沸かせる。だが、チームはなかなか輝かなかった。53分、ネイマールが左45度から鋭いミドルを放つが、これもバーに阻まれる。
 
　ペルーの密集した守りを崩せないまま、時間だけが過ぎていく。そのうち、カウンターから押し込まれる場面が目立ち始めた。ドゥンガ監督は交代によって活路を見出そうとしたが、流れを変えるには至らない。
 
　試合は互角のまま、タイムアップを迎えるかと思われた。だが４分のロスタイムで、ブラジルはついにゴールへの道筋を見つけ出す。
 
　92分、ペルーの攻撃を凌いだブラジルは、自陣から逆襲に出た。ネイマールが左サイドを一直線に駆け上がり、中央を窺う。
 
　左から中央へというのは、いつものパターン。ゴール前に戻ったペルーのDFたちは、ミドルを予想しただろう。予想通りネイマールは右足を振り上げる。だが、シュートは放たれなかった。彼は強いインサイドキックで、DF５人の間に長い横パスを通したのだ。
 
　その先、ペナルティエリアの右には、ぽつんとドグラス・コスタが立っていた。ペルー人には見えていないものが、ネイマールには見えていたのだ。ネイマールのこれ以上ないお膳立てに、D・コスタは丁寧なインサイドキックで応えた。ペルーGKガジェセの懸命のタックルをあざ笑うかのように、ゴールネットを揺さぶった。
 
　ネイマールの閃きによってブラジルは白星を手にした。だが、引き分けでも不思議ではない試合だった。
 
　これで12チームすべてが初戦を終えたが、優勝候補がことごとく苦しんでいる。開催国チリは勝ったものの欲求不満が溜まる内容で、大本命アルゼンチンは土壇場でパラグアイに追いつかれた。最多優勝を誇るウルグアイは無欲のジャマイカに辛勝、コロンビアに至ってはベネズエラに敗れてしまった。
 
　これは地元のチリ人をはじめとして、南米の人々が口にすることだが、「コパ・アメリカに簡単な試合はひとつもない」。油断すると痛い目に遭う。観戦者にはたまらない緊張感だ。
 
取材・文：熊崎敬