文字通り、歴史に残る勝利となった。

　現地時間６月28日に開催されたEURO2020の決勝トーナメント１回戦で、スイス（A組３位）はフランス（F組１位）とルーマニアのブカレストで激突。大方の予想に反し、開始15分にハリス・セフェロビッチの2試合連発弾で先制に成功するが、54分のリカルド・ロドリゲスのPKはGKユーゴ・ロリスに阻まれてしまう。

　すると、これで流れが一変。命拾いしたフランスに波状攻撃を仕掛けられ、57分と59分に立て続けにカリム・ベンゼマにネットを揺らされると、75分にはポール・ポグバに芸術的なミドルシュートを叩き込まれ、気付けば残り15分で１点リードから２点ビハインドに。

　だが、この日のスイスはここからがしぶとかった。諦めずに反撃を続け、81分にセフェロビッチのヘッドで１点を返すと、90分には途中出場のマリオ・ガブラノビッチが起死回生の一発を奪い、土壇場で振り出しに戻す。

　その後の延長では、フランスに押し込まれるが、何とか耐え抜き、勝負の行方は今大会初のPK戦となる。そこで主役となったのが守護神ヤン・ゾマーだ。チームメイトが確実に成功させるなかで、５人目のキリアン・エムバペのシュートを見事にストップ。スイスを史上初のEUROベスト８へと導いた。なお、同国が国際主要大会で準々決勝に進出するのは1954年の自国開催のワールドカップ（W杯）以来、67年ぶりとなった。

【動画】土壇場90分に追いついたスイスが世界王者撃破！歴史的一戦ハイライト
 

　歴史的快挙に選手たちも大興奮。ゾマーは自信たっぷりに、成し遂げた偉業を語っている。英公共放送『BBC』が伝えた。

「なんという試合、なんという夜だ。終盤はクレイジーで、美しかった。このチームを本当に誇りに思う。僕らは常に自分たちを信じていたし、もし劣勢に立たされても最後まで諦めないと言ってきた。僕たちのプレーは信じられないほど素晴らしかった。フットボールでは、常にどんなことでも“可能”なんだ。我々は小さな国だが、多くのクオリティを持ち、経験豊富なチームだ。僕らはそれを示した」

　また、キャプテンのグラニト・ジャカも、「アメイジング」と歓喜のメッセージを寄せている。

「スイス人の誰もが今日のことを誇りに思うだろう。僕たちは歴史を作ったんだ。気迫と個性を見せつけることができ、このチームの一員であることをとても誇りに思うよ。僕らはまだ決勝トーナメントにいて、夢を見ることができる。次はスペインと対戦するが、どんなチームかは分かっている。今日のようなファイティング・スピリットが必要だ」

　優勝候補筆頭とも目された世界王者を死闘の末に下したスイスは、勢いそのままに最多タイ３度の欧州制覇を誇る難敵も撃破することはできるだろうか。大注目の一戦は７月２日にロシアのサンクトペテルブルクで行なわれる。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部