「控えに甘んじるわけではないが…」
監督のカリスマとは何だろうか?
求心力、あるいはリーダーシップと言い換えても良い。集団を統率する力と言えるだろう。
例えば試合前に難しい用語を使って、ボードで得意げに説明するような監督は、選手の心をつかめない。豊富な知識や饒舌さは、むしろ反感を買うこともある。そこで訴えかける人間性や熱さがないと、何も伝わらず、溝が生まれる。
「そのボードのように動ける選手がどれだけいんだよ? そんなボールの動き、誰ができんだよ?」
机上の空論は、馬耳東風というか、呆れられてしまいだ。
<この人に付き従う>
結局のところ、監督はそれだけの魅力を放てるか、だろう。それにつながる要素としては、「この監督は自分の良さも悪さも知っている」という信頼感があるかもしれない。正しい査定で、正当な競争を生み出せるか。
「自分は控えに甘んじるわけではないが、受け入れる。なぜなら(ジョゼ)モウリーニョ監督は俺のプレーをすべてわかっているから。来るべき時を待っているんだ」
FCポルトが2003年に欧州王者になった時、FWベニー・マッカーシーが語っていた言葉は今も強く残っている。悪童と言われたストライカーは、「モウリーニョと心中できる」と言うほどに心酔していた。
モウリーニョはプロ選手歴がない。それでも、強烈なカリスマを放っていた。それは現場の選手をパーソナリティと納得させる言葉を持っていたからだろう。
「モウリーニョは試合前のミーティングで、『今日の試合展開はこうなる』と予言するんだ」
【動画】ポルト時代のマッカーシーがマンU戦で決めた驚異的なヘッド弾
求心力、あるいはリーダーシップと言い換えても良い。集団を統率する力と言えるだろう。
例えば試合前に難しい用語を使って、ボードで得意げに説明するような監督は、選手の心をつかめない。豊富な知識や饒舌さは、むしろ反感を買うこともある。そこで訴えかける人間性や熱さがないと、何も伝わらず、溝が生まれる。
「そのボードのように動ける選手がどれだけいんだよ? そんなボールの動き、誰ができんだよ?」
机上の空論は、馬耳東風というか、呆れられてしまいだ。
<この人に付き従う>
結局のところ、監督はそれだけの魅力を放てるか、だろう。それにつながる要素としては、「この監督は自分の良さも悪さも知っている」という信頼感があるかもしれない。正しい査定で、正当な競争を生み出せるか。
「自分は控えに甘んじるわけではないが、受け入れる。なぜなら(ジョゼ)モウリーニョ監督は俺のプレーをすべてわかっているから。来るべき時を待っているんだ」
FCポルトが2003年に欧州王者になった時、FWベニー・マッカーシーが語っていた言葉は今も強く残っている。悪童と言われたストライカーは、「モウリーニョと心中できる」と言うほどに心酔していた。
モウリーニョはプロ選手歴がない。それでも、強烈なカリスマを放っていた。それは現場の選手をパーソナリティと納得させる言葉を持っていたからだろう。
「モウリーニョは試合前のミーティングで、『今日の試合展開はこうなる』と予言するんだ」
【動画】ポルト時代のマッカーシーがマンU戦で決めた驚異的なヘッド弾
同じくチームの司令塔だったMFデコはそう明かしていた。
「それが、ものの見事に的中することが続いたんだよ! 相手選手のスカウティングは完璧で、弱点も見抜いていたから、おかげで簡単に攻略することができた。小難しい言葉を使うわけではない。アドバイスが簡潔で、的確だったから、自然と選手たちは彼に従うようになったんだ」
シンプルな論理だろう。監督を信じることで勝利できる。選手たちの脳に、それが刷り込まれた。
それはカリスマに帰結した。
もっとも、選手の心をつかむ手立ては一つではない。例えば、監督自身が背負ってきた人生の厚みが背景となって、それに選手が心服することもある。今は亡きルイス・アラゴネスなどはそのタイプだし、ポルトガル代表監督のフェルナンド・サントスもその包容力が語られる指揮官だ。
カリスマと言われる監督は、とにかく人間としての熱さを持っている。人を率いる。それには理論を越えた力が必要なのだろう。
Jリーグでは、どのサッカー監督がカリスマと言えるだろうか。
文●小宮良之(スポーツライター)
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
「それが、ものの見事に的中することが続いたんだよ! 相手選手のスカウティングは完璧で、弱点も見抜いていたから、おかげで簡単に攻略することができた。小難しい言葉を使うわけではない。アドバイスが簡潔で、的確だったから、自然と選手たちは彼に従うようになったんだ」
シンプルな論理だろう。監督を信じることで勝利できる。選手たちの脳に、それが刷り込まれた。
それはカリスマに帰結した。
もっとも、選手の心をつかむ手立ては一つではない。例えば、監督自身が背負ってきた人生の厚みが背景となって、それに選手が心服することもある。今は亡きルイス・アラゴネスなどはそのタイプだし、ポルトガル代表監督のフェルナンド・サントスもその包容力が語られる指揮官だ。
カリスマと言われる監督は、とにかく人間としての熱さを持っている。人を率いる。それには理論を越えた力が必要なのだろう。
Jリーグでは、どのサッカー監督がカリスマと言えるだろうか。
文●小宮良之(スポーツライター)
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。