アーセナルOBが古巣を案じている。オランダ・メディア『Voetbal International』が現地時間５月20日付けで伝えた。

　長年の低迷に、欧州スーパーリーグ構想が追い打ちをかけ、オーナーのスタン・クロンケに対するファンからの怒りがピークに達しているアーセナル。そんな名門の買収に名乗りを挙げたのが『Spotify』のトップ、ダニエル・エク氏だ。幼少期からグーナー（アーセナルのファン）であることを明かし、ファン目線で具体的な改革を訴える38歳のスウェーデン人CEOには、多くの人々から支持が集まっている。

　それはレジェンドも例外ではない。1995年から2006年まで10番を背負い、優雅なプレーでファンを魅了した元オランダ代表FWデニス・ベルカンプは、元チームメイトのティエリ・アンリやパトリック・ヴィエラと共に、エク氏への全面サポートを約束している。その決め手となったのは、決して傲慢ではない、真摯な姿勢なようだ。

「ダニエルは生まれてからずっとアーセナルのファンだった。本物だね。彼もまた、以前からクラブの衰退を懸念していたようだ。スーパーリーグのニュースが何日も続いたとき、ダニエルは爆発寸前だった。その時、彼は何か行動を起こしたいと思い、私たちに連絡してきた。

　ティエリ、パトリック、私の３人でミーティングをした際、彼は自分の考えを私たちに話してくれた。それは最初の瞬間から印象的だったよ。私にとって重要なのは、ダニエルが買収を素敵なおもちゃを買うことだと考えていないことだ」
 

　いちファンだからこその、圧倒的な熱意には最大限の賛辞を寄せる。

「彼はフットボールファンの情熱を理解している。彼自身がそうだからだ。また、ファンの影響力をかなり高めたいと考えている。例えば、クラブ運営の中に彼らの居場所を与えることだ。それはとても重要なことだと考えている。サポーターに寄り添いたいんだ」

　無論、熱意だけではどうにもならないことは百も承知だ。「ダニエルは問題がそれだけでは解決しないことを理解していることも重要なポイントだ」と語り、こう続けている。

「アーセナルが来季トップを目指すのであれば、全ポジションにワールドクラスの選手を獲得しなければならない。クラブにはこのカテゴリーの選手を惹きつける魅力が長年ずっと欠けている。だからこそ、構造改革が必要なんだ。これは根本的で長期的なプロジェクトであり、トップから変革する必要がある。買収が重要なんだ。そうすれば、クラブはビジネスのように運営されるべきではないということを理解しているオーナーのもとで、アーセナルが継続できる」

　そのうえで、クラブの黄金時代を知る男は、改革の必要性を強く訴えている。

「アーセナルのDNAは、トップを獲得するという野心だ。負けを決して認めない。しかし、その精神は徐々に失われつつあり、現状への諦観を感じる。まるでアーセナルが中位で終わるのが当たり前であるかのようだ。そんなものはこのクラブのものではない。アーセナルのDNAを復活させなければならない」

　この熱い思いは、最終節を前にまさかの９位に沈むチームの復活の一助となるのだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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