難敵に多大な精神的ダメージを与えたバルサの圧倒的な強さ。

バイエルンは3バックで試合開始を迎えたが、序盤で早くも何度か危険な場面を作られたことで4-3-3にシステムを変更。SBは右にラフィーニャ、左にベルナト、そして左MFのチアゴは前線の右サイドに移った。
1)圧巻だったのはディフェンス
キックオフからタイムアップのホイッスルが鳴るまで、極めてインテンシティーの高い試合を制したバルセロナ。圧巻だったのは、ほぼ全ての局面で数的優位を作り出したディフェンスだ。
バイエルンのパス回しを封じ、主導権を握ろうとする意図は立ち上がりから明らかで、スアレス、メッシ、ネイマールの3トップが積極的なプレスを敢行。準々決勝の第1レグでポルトが披露したハイラインプレスを高度に再現して、ビルドアップの起点となるシャビ・アロンソや相手の3バックに質の高いパス出しを許さなかった。
気持ちを前面に押し出した球際の強さや、セカンドボールに対する出足の鋭さも特筆に値。なかでもラキティッチの貢献度は高く、中盤で対峙したシュバインシュタイガーやチアゴに仕事らしい仕事をさせなかった。
2)個の打開も組織的な崩しも◎
バイエルンの流麗なパスワークを封じたバルサは、オフェンスも冴え渡っていた。
メッシとネイマールのドリブル突破に代表される個の打開はもちろん、このふたりとスアレスやイニエスタがポジションチェンジしながら有機的に絡む仕掛け、D・アウベスとジョルディの積極的なオーバーラップを活かした崩しなど、組織的な攻撃も全てがハイクオリティーだった。
12分にスアレス、39分にD・アウベスが相手GKとの1対1という絶好機を逃したとはいえ、バイエルンの守備網を完全に切り裂いたのは事実。相手のシステムが前半途中に3バックから4バックに変わっても、バルサの攻撃が停滞することはなかった。
3)メッシが千両役者の面目躍如
それでも先制点を奪えず、嫌なムードが漂いはじめた77分だった。メッシが巨大な違いを作り出す。右サイドの高い位置でボール奪取に成功したD・アウベスのパスを受けると、エリア手前から左足を一閃。ゴールマウスの右下隅を狙った、コースもスピードも抜群のシュートを放ち、好守を連発していたノイアーの牙城を崩してみせた。
そのエースは、80分にも大仕事を果たす。カットインからの左足シュートを警戒するCBボアテングの裏を突いた縦へのドリブル突破を成功させて、最後は飛び出してきたノイアーをあざ笑うような右足のループで追加点を挙げたのだ。
93分の3ゴール目に繋がった高速ドリブルなどを含め、この日のメッシは千両役者の面目躍如となるプレーを連発していた。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチだろう。
4)追い込まれた名将の采配に注目
ミュラーのクロスにレバンドフスキが飛び込んだ18分のプレーを除き、決定機を一度も作れなかったバイエルンにとっては、ノイアーが試合後のインタビューで言葉を詰まらせていた通り、精神的なダメージが計り知れない敗戦となった。
ポルト戦の教訓を活かせなかったグアルディオラ監督の采配や、ラームが口にした「ボールを簡単に失い、カウンターのチャンスを与えすぎた」ことなど改善点は多く、逆転突破するには奇跡が必要だろう。
もちろん、負傷離脱中のリベリやロッベン、アラバが健在なら結果は違っていたかもしれない。しかし、それ以上に感じさせたのは、戦術的な引き出しの差。こだわり続けてきたボールポゼッションを、あろうことか古巣に封じられたグアルディオラは、第2レグでどんな解決策を用意するのか。
決勝進出を懸けたバトルの行方はほぼ見えたものの、追い込まれた名将が振るう采配という楽しみはまだ残っている。
文:遠藤孝輔
キックオフからタイムアップのホイッスルが鳴るまで、極めてインテンシティーの高い試合を制したバルセロナ。圧巻だったのは、ほぼ全ての局面で数的優位を作り出したディフェンスだ。
バイエルンのパス回しを封じ、主導権を握ろうとする意図は立ち上がりから明らかで、スアレス、メッシ、ネイマールの3トップが積極的なプレスを敢行。準々決勝の第1レグでポルトが披露したハイラインプレスを高度に再現して、ビルドアップの起点となるシャビ・アロンソや相手の3バックに質の高いパス出しを許さなかった。
気持ちを前面に押し出した球際の強さや、セカンドボールに対する出足の鋭さも特筆に値。なかでもラキティッチの貢献度は高く、中盤で対峙したシュバインシュタイガーやチアゴに仕事らしい仕事をさせなかった。
2)個の打開も組織的な崩しも◎
バイエルンの流麗なパスワークを封じたバルサは、オフェンスも冴え渡っていた。
メッシとネイマールのドリブル突破に代表される個の打開はもちろん、このふたりとスアレスやイニエスタがポジションチェンジしながら有機的に絡む仕掛け、D・アウベスとジョルディの積極的なオーバーラップを活かした崩しなど、組織的な攻撃も全てがハイクオリティーだった。
12分にスアレス、39分にD・アウベスが相手GKとの1対1という絶好機を逃したとはいえ、バイエルンの守備網を完全に切り裂いたのは事実。相手のシステムが前半途中に3バックから4バックに変わっても、バルサの攻撃が停滞することはなかった。
3)メッシが千両役者の面目躍如
それでも先制点を奪えず、嫌なムードが漂いはじめた77分だった。メッシが巨大な違いを作り出す。右サイドの高い位置でボール奪取に成功したD・アウベスのパスを受けると、エリア手前から左足を一閃。ゴールマウスの右下隅を狙った、コースもスピードも抜群のシュートを放ち、好守を連発していたノイアーの牙城を崩してみせた。
そのエースは、80分にも大仕事を果たす。カットインからの左足シュートを警戒するCBボアテングの裏を突いた縦へのドリブル突破を成功させて、最後は飛び出してきたノイアーをあざ笑うような右足のループで追加点を挙げたのだ。
93分の3ゴール目に繋がった高速ドリブルなどを含め、この日のメッシは千両役者の面目躍如となるプレーを連発していた。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチだろう。
4)追い込まれた名将の采配に注目
ミュラーのクロスにレバンドフスキが飛び込んだ18分のプレーを除き、決定機を一度も作れなかったバイエルンにとっては、ノイアーが試合後のインタビューで言葉を詰まらせていた通り、精神的なダメージが計り知れない敗戦となった。
ポルト戦の教訓を活かせなかったグアルディオラ監督の采配や、ラームが口にした「ボールを簡単に失い、カウンターのチャンスを与えすぎた」ことなど改善点は多く、逆転突破するには奇跡が必要だろう。
もちろん、負傷離脱中のリベリやロッベン、アラバが健在なら結果は違っていたかもしれない。しかし、それ以上に感じさせたのは、戦術的な引き出しの差。こだわり続けてきたボールポゼッションを、あろうことか古巣に封じられたグアルディオラは、第2レグでどんな解決策を用意するのか。
決勝進出を懸けたバトルの行方はほぼ見えたものの、追い込まれた名将が振るう采配という楽しみはまだ残っている。
文:遠藤孝輔