ペップ・グアルディオラはやってのけた――。
 
　監督就任から２シーズン連続のブンデスリーガ制覇。「もっとも重要なタイトル」を獲得してみせた。
 
　そして、ポルトと戦ったチャンピオンズ・リーグ（CL）準々決勝では、第１レグのビハインドをひっくり返す鮮やかな逆転勝利、それも第２レグに大量６ゴールを叩き込む圧勝でベスト４に勝ち上がった。
 
　結果的に優勝決定ゲームとなった30節ヘルタ・ベルリン戦（この試合の翌日に２位ヴォルフスブルクが敗れ、バイエルンの優勝が決まった）は、攻守に精彩を欠きながらも、バスティアン・シュバインシュタイガーのゴールで勝点３を積み上げた。１-０のこの勝利は、汗と努力の匂いがした。
 
　もちろん、ペップにとって準備こそが全てである。このマスターマインド（卓抜した知性、あるいはその持ち主）は、２試合をワンセットとして考える「ダブルコーチング」という方法論を採っている。ごくごく簡単に言えば、常に次の試合への布石を打つように戦術を採用し、選手を起用していくのである。
 
「監督がすべての鍵だ。ペップにはプランA、プランB、プランCだけでなく、すべてのアルファベット分のプランがある」
　そう称賛するのは、カール＝ハインツ・ルムメニゲCEOだ。
「ペップがどんな戦い方をしてくるのか、対戦相手は分からない」
 
　例えば、27節のドルトムント戦、ペップはかなり守備的な戦術を使って驚かせた。マリオ・ゲッツェをベンチに置き、シュバインシュタイガー、フィリップ・ラーム、シャビ・アロンソの３人を中盤センターに並べた。結果は１-０。狙いどおり無失点で勝利を収めた。
 
　例えば、CL準々決勝の第２レグ。１-３で敗れた第１レグを徹底的に分析したペップは、ポルト攻略のポイントはサイドにあると見極め、ラームを２列目右サイドに張らせ、左からはSBファン・ベルナトに積極的なオーバーラップを指示した。この戦略がズバリ的中したことは、６-１という結果がなによりも証明している。
 
　こうして勝ち上がったCL準決勝の対戦相手はバルセロナ。ペップの古巣である。勝負の鍵は、もちろんペップが握っているだろう。緻密な計算でかつての同僚（バルサのルイス・エンリケ監督）と教え子たちをねじ伏せるのか、あるいは彼らがペップを出し抜くのか。虚々実々の頭脳戦が楽しめるはずだ。
 
　マティアス・ザマーSDは勝利の可能性を「フィフティ・フィフティ」と見ている。フランツ・ベッケンバウアー名誉会長は「バイエルンにチャンスがないわけではないが、有利なのはバルセロナだ」と予想する。
 
　ペップは強気だ。
「バイエルン、レアル（マドリー）、バルセロナのようなクラブにとって、３冠にこそ意味がある」
 
【記者】
Patrick STRASSER｜Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー／アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり！』、2012年の『まるで違う人間のように』（シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝）がともにベストセラーに。
【翻訳】
円賀貴子