「試合中の自分はまるで別人」トップGKに必要なメンタリティーとは?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:ワールド

小宮良之

2021年04月20日

スペイン語で「クレイジー」としばしば呼ばれる

CLで対戦後に健闘を称え合うクルトワ(奥)とアリソン(手前)。(C) Getty Images

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 各ポジションに、人間としてのキャラクターは出る。例えばストライカーとしての能力は持っていても、性格が合わずに大成できない、という例はプロの世界ではしばしばある。逆説すれば、キャラクターはそのポジションの適性とも言えるだろう。 

 では、ゴールキーパーというポジションに求められるキャラクターとはどんなものか。

 忍耐強さ、辛抱強さは欠かせないだろう。常に冷静さを保って物事に対処し、最悪の事態を想定しながら、できるだけ回避する落ち着き。そして起こってしまった時の管理、バックアップを怠らない。質実剛健さというのか。

 ストライカーは得点というプラス項目で評価されるが、ゴールキーパーは失点というマイナス項目で評価されるだけに、対極的と言えるだろう。

 そもそもゴールキーパーは、否応なしに失点という責任を押し付けられる。そのマイナスは次にビッグセーブをしたとしても、完全には取り消されない。あくまで失点として記録され、記憶される。たとえ自分の直接的なミスではないとしても、だ。

「Loco」

 ゴールキーパーは、スペイン語で「クレイジー」としばしば呼ばれる。切迫した状況に置かれているだけに、他の選手と比べて行動規範がおかしかったりする。心理的にズレた状態でいなければ、ゴールマウスに立つことに耐えられないのかもしれない。

「緊張する自分と、プレーする自分を切り離せるか」

 スペイン代表のGKケパ・アリサバラガ(チェルシー)は、その信条を語っている。二重人格というわけではないが、トップレベルのGKは心理的に重圧を回避できる術を知っている。もう一人の自分を作るまで、日ごろのトレーニングから自らを高められるのだ。
 
「ゴールキーパーは極力、感情を表に出してはいけない」

 これは、一流GKの条件と言える。ヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)、ティボー・クルトワ(レアル・マドリー)、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(FCバルセロナ)、アリソン(リバプール)など世界的な守護神たちは、必要以上に喜ばないし、落ち込まない。たとえビッグセーブをしても、「集中を切らさずに戦うんだ」というメッセージを周りに伝えられる。90分を通し、波なしに戦えるのだ。

「テレビで自分がプレーする姿を見た時、これが自分なのかって疑ったよ。まるで別人のように見えた」

 レアル・マドリー、スペイン代表で数々のタイトルを手にし、世界最高のGKの一人だったイケル・カシージャスも、ケパと同じようなことを語っていた。彼はピッチで変身していたのだ。どんなことにも動じないスーパーヒーローに——。

 トップGKになるのは簡単ではない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 

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