サッカー界の「神」とバスケットボール界の“キング”の舌戦は、各地で議論を呼んだ。

　事の発端は、ミランのズラタン・イブラヒモビッチが、ロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズによる積極的な政治的発信に苦言を呈したことだ。元スウェーデン代表ストライカーは「自分が得意なことをやれ」「成功した著名人が最初に犯す過ち」と話している。

　これに対し、レブロンはイブラヒモビッチもかつてスウェーデン国内の人種差別に言及していたと指摘。発信前に勉強している自身は批判に値しないはずと主張し、「間違ったことには絶対に口を閉ざさない」「自分の声とプラットフォームがいかに力強いかを承知しており、スポーツだけをやるなどあり得ない」と反論した。

　昨今のアメリカの社会情勢もあり、イブラヒモビッチの意見に反発する声も少なくない。カリフォルニア出身の元NBA選手バロン・デイビスは、ツイッターで「ズラタン、LAから離れてろ」と、厳しくイブラヒモビッチを非難している。

「ギャラクシーは最悪だ。そしてお前はめちゃくちゃバカ。キング（レブロン）に話させろ」

　だが、イブラヒモビッチは３月２日にも「政治は世界を分断する。スポーツは世界を団結させる」と、アスリートはアスリートをするべきとの持論を主張し続けた。

「どこであってもサッカーはアスリートを団結させる。団結のためにオレたちはやることをやろう。そういうメッセージだった。アスリートはアスリートをするべき。政治をするのは政治家であるべきだ」

　しかし、ポートランド・トレイルブレイザーズでプレーするエネス・カンターは、そのイブラヒモビッチの発言を伝える報道を投稿したうえで「違う。人類を分断するのは、独裁者と権威主義者だ」とツイートしている。

「アスリートが声を上げるときは、楽しむためや注目を集めるためじゃない。そういった政権の責任を問うためだ。ごう慢で共感や思いやりがなく、自分のことしか気にかけない人間は、人々に正義のために立ち上がるなと言えるのだ」

　レブロンやカンターの意見に同意する人も、イブラヒモビッチの考えに同調する人もいるだろう。だからこそ、議論になる。確かなのは、相手の考え方に暴言を吐くべきではないということではないだろうか。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部